向見むこうみ)” の例文
大窓から一日で劒岳を上下しようと企てた私達の向見むこうみずには、池の平のさんしょううおも肝を潰したに相違あるまい。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
私のこの向見むこうみずな決心が、やがて私の尊敬すべき友人、深山木幸吉の生命いのちをさえ奪うものであることを、予知し得たならば、私はあるいは、あの様な恐ろしい復讐の誓いをしなかったかも知れないのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「大丈夫よ。お父さん、わたしだって其様そんな向見むこうみずな事はしやしないから大丈夫よ。カッフェーに働いていさえすれば誰の世話にならなくっても、毎日会っていられるんだから。いっそ一生涯そうしている方がいいかも知れないのよ。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)