吐月峯はいふき)” の例文
笑いもせず、泣きもせず、口数もきかず、わしが咳をすれば吐月峯はいふきを、眼鏡をはずせば、すぐ目脂めやにを拭く手帛てぎぬをといった風によく気がついた。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
とつぶやきながら、うなだれている禰宜様宮田の胡麻塩の頭を眺めて、彼女は途方もない音を出して、吐月峯はいふきをたたいた。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
氣の無い樣な顏をして煙りを吹いてゐた信吾は、『さあ、何方ですか。』と、吐月峯はいふきに莨の吸殼を突込む。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「半分は捨てたんぢやないか、この吐月峯はいふきが奈良づけ臭いところを見ると、俺は妙なことに氣が付いたんだ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
たとえ鼻の先へ百本千本の十手が飛んでこようとも、どっかり胡坐あぐら吐月峯はいふきを叩いていようという親分。高札なんどせせら笑って、かえって面白がってこそ文珠屋なのに。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
斉興は、暫く、喫っていたが、吐月峯はいふきへ、雁首を叩きつけながら
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
『さあ、何方どつちですか。』と、吐月峯はいふきに莨の吸殻を突込む。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「本當に酒を呑んだのは、吸物椀と盃洗と、吐月峯はいふきさ」
ぽんと吐月峯はいふきを叩いた三次
新納は、吐月峯はいふきを叩いて
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)