吉川よしかわ)” の例文
その窓からは、あの秋子あきこ蒼白あおじろい顔ばかりでなく、父親の吉川よしかわ機関手が、真っ黒い髯面かおのぞけていることがあったことを。
汽笛 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「だから吉川よしかわさんに会って訳を話して見た上で、日取をきめようかと思っているところだ。黙って休んでも構わないようなもののそうも行かないから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぼくは吉川よしかわだが、ぼくが育った横浜では、吉川きっかわと呼ぶ人の方が多かった。だから子供の頃は、吉川きっかわだと思っていた。どっちが本当かを父にただしたらやはり吉川きっかわが昔からの姓だといった。
向う側の吉川よしかわという待合で芸者がお客と一所に「三千歳みちとせ」を語っている。聞くともなしに聞いているうち、兼太郎はいつかうとうととしたかと思うと、「田島さん、田島さん。」と呼ぶ声。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と二人連れで馬喰町四丁目へ掛ると、其の頃吉川よしかわと申す居酒屋がありました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おひまなら、今日どうです、いっしょに行っちゃ。吉川よしかわ君と二人ふたりぎりじゃ、さむしいから、来たまえとしきりに勧める。吉川君というのは画学の教師で例の野だいこの事だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
詰襟のその洋服は吉川よしかわ訓導のだった。
錯覚の拷問室 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「いいえ、あの吉川よしかわ先生がお付けたのじゃがなもし」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)