吉右衛門きちえもん)” の例文
旧字:吉右衞門
昭和八年四月十九日 大磯一本松、中村吉右衛門きちえもん別邸に行く。安田靫彦ゆきひこの意匠になるといふ庭に昔絵を見るが如き稚松多し。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
市村座いちむらざで菊五郎、吉右衛門きちえもんの青年俳優の一座を向うへ廻して、松居松葉まついしょうよう氏訳の「軍神」の一幕を出した、もう引退まえの女優生活晩年の活動時機であった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「とにかく壮烈なものでしたよ。私は見ていたんです。ミソ踏み眉山。吉右衛門きちえもんの当り芸になりそうです。」
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
(実際吉右衛門きちえもんはこの場の演技によって自分に涙を催させた、)それほどますますこの後の率直でない、小さい卑しい詭計きけいが、この無邪気で善良らしい剣道の達人に矛盾するように見える。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
吉右衛門きちえもん菊五郎きくごろうはどうも歌舞伎のオオソドックスに忠実だとはおもえません。まア羽左衛門うざえもんあたりの生世話きぜわの風格ぐらいが——」などにもつかぬ気障きざっぽいことを言っていると、突然とつぜん
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
現今いまの左団次の伯父さんの中村寿三郎じゅさぶろうや、吉右衛門きちえもんのお父さんの時蔵や、昨年死んだ仁左衛門にざえもん我当がとうのころや、現今いまの仁左衛門のお父さんの我童がどうや、猿之助えんのすけのお父さんの右田作うたさく時代、みんな、芸も
牛込うしごめ若宮町、中村吉右衛門きちえもん邸。
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)