叶屋かのうや)” の例文
不動明王の木像が、その右手に持った降魔ごうま利剣りけんで、金貸叶屋かのうや重三郎を突き殺したという、江戸開府以来の大騒ぎがありました。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ああ、叶屋かのうやの二階で田之助を呼んだ時、その男衆にやった一包の祝儀があったら、あのいじらしい娘につまの揃ったのが着せられましょうものなぞと、愚痴も出ます。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
安政あんせい二年卯の年、十月二日真夜中の大地震まで、八重洲河岸で武家を相手に手広く質屋を営んでいた叶屋かのうやは、最初の揺れと共に火を失した内海紀伊うつみきいさまの中間部屋の裏手に当っていたので
甲女「へえ叶屋かのうやでございます、なんぞ御入用ならかよいを置いてきますから」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの大資産を一朝にひっくりかえした後日ものがたりの主人公となったのも、叶屋かのうや歌吉という、子まである年増としま芸妓と心中した商家の主人の二人の遺子が、その母と共に新橋に吉田屋という芸妓屋をはじめ
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「八、相手は容易ならぬ人間だ。下っ引を五六人集めて、叶屋かのうやの奉公人の身許をみんな洗ってくれ」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)