可憐しおら)” の例文
が、また娘分に仕立てられても、奉公人の謙譲があって、出過ぎた酒場バアの給仕とは心得が違うし、おなじ勤めでも、芸者より一歩退さがって可憐しおらしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「武蔵に似て、負けない口をきく小僧弟子でしだ。だが、涙をためて、師の肩持ちをするところは可憐しおらしい。武蔵が死んだら、わしを頼って来い、庭掃きにつかってやる」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのころの葉子には、まだ娘気の可憐しおらしさや、文学少女らしいほこりもあった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『——と、大概、極めつけて来るだろうと思ったから、何もいわずに、行こうと思ったが、酔いつぶれの仮面めんをかぶって、一言ひとこと、礼に来ただけでも、可憐しおらしいと思ってくれ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おばさんよ……」と、鄒淵すうえんがすぐその傍らから。「そんなにうれしいのかい、おれたちの助太刀がよ。こんな可憐しおらしいおばさんなんて、ついぞ見たことはねえの。なア鄒潤すうじゅん
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その美貌と、身ごなしの可憐しおらしさに、眼をみはったのである。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)