叮重ていちょう)” の例文
この青年は筒井が仕えをつとめるようになった最初から、筒井に心して使うようになり、あまりに叮重ていちょうなあつかいに困るほどであった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
けれども疎略には致すことができませんから、叮重ていちょうにお扱い申して御用の筋を伺うと、いよいよ驚いてふるえ上ってしまいました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
店の方では叮重ていちょうなつもりかも知れぬが、忙しい人間にとっては迷惑千万である。そんな事で手間取らせられてはたまらない。
「あっ、これは疎匇そそうを」と叫びつつ、あわてて引き起こし、しかる後二つ三つ四つ続けざまに主人に向かいて叮重ていちょうに辞儀をなしぬ。今の疎忽そこつのわびも交れるなるべし。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
傲慢ごうまん無礼、鼻持ちならぬ奴だが、丹後弓彦の奴がうわべはイギリス型の紳士みたいに叮重ていちょうで取り澄ましているけれども、こいつが又傲慢、ウヌボレだけで出来上ったような奴で
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ニュウファウンドランド島の青ぞらの下で、この叮重ていちょうな東洋風の礼を受けたのです。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それをお尋ねせずに老先生に亡くなられては甚だ残念であるが、その事を老先生にお尋ねする事を主治医の貴下にお許しを受けに伺った次第ですが……というナカナカ叮重ていちょうなお話であった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
若侍は又も、いよいよ叮重ていちょうに頭を下げた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)