古藤ことう)” の例文
木村さんお土産みやげを買ってちょうだいな。愛も貞もですけれども、親類たちや古藤ことうさんなんぞにも何かしないじゃ顔が向けられませんもの。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして青年(青年は名を古藤ことうといった)が葉子に続いて飛び乗った時には、機関車の応笛おうてきが前方で朝の町のにぎやかなさざめきを破って響き渡った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
倉地さんもいてくださるのでかえっていいよいと思いますが古藤ことうさんをここにお連れしちゃいけないでしょうか。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
岡に住所を知らせてから、すぐそれが古藤ことうに通じたと見えて、二月にはいってからの木村の消息は、倉地の手を経ずに直接葉子にあてて古藤から回送されるようになった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
列座の人々はまだ殊勝らしく頭をうなだれている中に、正座近くすえられた古藤ことうだけは昂然こうぜんと目を見開いて、ふすまをあけて葉子がしとやかにはいって来るのを見まもっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
葉子はその声を聞いて古藤ことうが来たのを知った。そして大急ぎで涙を押しぬぐった。二階から降りて来て取り次ぎに立った愛子がやがて六畳のにはいって来て、古藤が来たと告げた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)