千本ちもと)” の例文
其後夫婦連れで例の西石垣さいせき千本ちもとへお茶漬を一度食べに行つた時も、同じく細君の帶の間におさめてあつた蟇口の中から支拂はれたのであつたが
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「同じく九年一月、奥山大学が仙台で幕府の国目付(千本ちもと兵左衛門、水野与左衛門)に覚書おぼえがきを差出した、しかし両目付はこれを拒んで受取らなかった」
「あるわけはないよ。奧の八疊の縁側は主人の千本ちもとさんが開けたし、此處には俺達二人頑張つて居るから、お勝手へも表へも通れないことになつて居る」
台傘の朱は、総二階一面軒ごとの毛氈もうせんに、色映交さしかわして、千本ちもと植えたる桜のこずえくるわの空に咲かかる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
豊島としまのや千本ちもとのいてふ落葉する夕日の森に御供みともするかな
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「へエ、千本ちもと樣の方から閉つて、輪鍵が掛けてあつたさうでございます。——お隣りにゐらつしやる方々は、昨夜ゆうべ一と晩家搜しして曉方に引揚げて行かれましたが」
「喃、千本ちもと氏、町方の御用聞などといふものは先づあんなもので御座らうな。あんなことでは、御膝元の靜謐せいひつは心もとないが、江戸の町人は人が良いから無事に濟むわけで——」