十一月しもつき)” の例文
板倉と撫川なずかわさとの、中を行く芳野の川の、川岸に幾許ここら所開さけるは、たがうえし梅にかあるらん、十一月しもつきの月の始を、早も咲有流さきたる
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鹿ししたに法勝寺ほっしょうじは、月に幾日かは、必ず法話や専修念仏の衆会しゅうえが催されるのに、この十一月しもつきから師走しわすになってからは
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宅眷やからに補はせなどしぬるほどに十一月しもつきに至りてはさながら雲霧の中に在る如く
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
頃は十一月しもつき初め。朝々はもう真っ白な霜なのに、夜明けまぢかというとよく、わざわざ袋路次の奥へ入って来て、ぽかぽか、木魚を叩きぬく頭陀ずだがある。今朝も今朝とて、まだうす暗い外で
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)