北夷ほくい)” の例文
現在の住民を北夷ほくい後裔こうえいだと認めない以上は、そうしたアイヌ語が伝わって今に至った手順も想像してみなければならなかった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
日本の存在をその尨大ぼうだいな陸地面からさがし求めるのにまごついたにしても、西欧南洋北夷ほくい諸州の箇々の大きさに、そう驚きはしなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漢帝が北夷ほくいの国へおつかわしになった宮女の琵琶びわを弾いてみずから慰めていた時の心持ちはましてどんなに悲しいものであったであろう、それが現在のことで
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とうの世代から、すでにそんな言葉があるとおり、西に太行たいこう山脈、東に遠く渤海ぼっかいをひかえ、北方に負う万里ノ長城は、北夷ほくいの襲攻にそなえ、不落の名がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに斜谷やこく天嶮てんけんあり、ここに北夷ほくいを平げて、勇気凜絶りんぜつの新手五万あり、加うるに、わが次男曹彰は、武力衆にすぐれ、この父の片腕というも、恥かしくない者である。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いったい北夷ほくいの兵は、長槍の術にけ、また馬の良いのを持っているので、接戦となると、剽悍無比ひょうかんむひですが、弓、石火箭いしびやなどの技術は、彼らのよくするところでありません。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)