前膊まえかた)” の例文
慶応二年師走のある寒い昧暗まいあん、芝増上寺の庫裏くりを二人の若い武士が襲った。二人とも、麻の草鞋わらじに野袴、革のたすきを十字にかけた肉瘤盛り上がった前膊まえかたあらわである。笠もない、覆面もしない。
増上寺物語 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)