剃落そりおと)” の例文
楯彦氏は白布きれの下から手を出して、剃落そりおとされた自分の頭にそつと触つてみた。頭は茶碗のやうに冷かつた。
かねて岸本にはこの旅を終る頃にげたいと考えて置いたことが有った。巴里を引揚げる頃が来たら自分のひげ剃落そりおとしてしまおう、そして帰国の途に上ろうと考えていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小父さんがあの美しい髯を自分で剃落そりおとしてしまったのも、それからだ。古い写真の裏に長々と述懐の言葉を書きつけ、毎日のこまかい日記をめ、前垂掛の今の小父さんに変ったのも、それからだ。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)