分岐ぶんき)” の例文
このチャアリイと、兄のウォルタアがいま対面したら?——あまりにくっきりした人生の分岐ぶんきだ。双方に残酷だ。もうこうなったらは、会わないほうがいい。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
燈籠とうろうやら、いくつにも分岐ぶんきした敷石の道やら、瓢箪ひょうたんなりの——この形は、西洋人なら、何かに似ていると言って、婦人の前には口にさえ出さぬという——池やら
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
五六十歩往って小さな石橋いしばしを渡り、東に折れて百歩余往ってまた大きな方の田川に架した欄干らんかん無しの石橋を渡り、やがて二つに分岐ぶんきして、直な方は人家の木立の間を村にかく
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いやしくも評家であって、専門の分岐ぶんきせぬ今の世に立つからには、多様の作家が呈出する答案を検閲するときにあたって、いろいろに立場をえて、作家の精神をまねばならぬ。
作物の批評 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このおかを甲州街道の滝阪たきざかから分岐ぶんきして青山へ行く青山街道が西から東へとって居る。青山に出るまでには大きな阪の二つもあるので、甲州街道の十分の一も往来は無いが、街道は街道である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)