出会でく)” の例文
旧字:出會
ところで、旅行は近藤君と一緒に、八月一っぱいやることにして、この二十六日に、インテルラーケンで出会でくわす約束になっている。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
それがどうだろう、全く偶然、その美味いたいに、はからずも出会でくわしたものだからたまらない。意外な掘り出しものに驚いた。
明石鯛に優る朝鮮の鯛 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
手古舞姿の美しいのを見ても、私は腹が立って腹が立って、——その上長吉と一緒に聖堂裏で逢引しているのに出会でくわすと、矢もたてもたまらなかった。
私が子供たちをつれて自然林へ図画を書かせに歩いていたとき、トルコ帽の彼に出会でくわしたのである。
私は今こそ本当に直接にヒタと本当の問題に出会でくはした。それは社会と云ふ大きなものに包まれたいろ/\なものについての疑問である。それは痛切な私の問題である。
人間と云ふ意識 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
「また此奴こいつ出会でくはしたんだな。」職工はいきなりその原稿を卓子テーブルの上に叩きつけた。「此奴から逃げ出したいばかりに、わざわざ倫敦くだりまで出掛けて来た俺ぢやないか。」
第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶やかんだ。その猫にもだいぶったがこんな片輪かたわには一度も出会でくわした事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大降りにでも出会でくわさなければ泊り込むものは殆んど無いそうで、宿帳を開けて見ても、知った名前はとんと見当らない。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
しかし、漢方医の良伯に偶然二人だけで出会でくわすことになったのは運命というものであろう。
街道をまた南へむかうと、さすがの名勝も冬になれば、人っ子一人出会でくわさない、景はますます壮大になって、対岸のロートシュトックが眉にせまる。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)