処々しよ/\)” の例文
旧字:處々
自然主義をはきちがへて、魂を失つた人間の多いのを私は処々しよ/\に見る。しかし、これは自然主義の罪ではない。又その責任でもない。
墓の上に墓 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
以上河流かりうと運河の外なほ東京の水の美に関しては処々しよ/\の下水が落合つて次第に川の如きながれをなす溝川みぞかはの光景をたづねて見なければならない。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
薄緑の芝生や、しなやかに昇る噴水で飾られたそのがある。処々しよ/\に高尚な大理石の像が立てゝある。木立の間には、愛の神をまつつたほこらがある。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
殊にナブルスの谷は、清泉処々しよ/\に湧きて、橄欖かんらん無花果いちじゆくあんず、桑、林檎、葡萄、各種野菜など青々と茂り、小川の末にはかはづの音さへ聞こえぬ。
堀割の岸には処々しよ/\物揚場ものあげばがある。市中しちゆうの生活に興味を持つものには物揚場ものあげばの光景もまたしばし杖をとゞむるに足りる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)