冷雨ひさめ)” の例文
その約束の日、由良氏は家を出ようとして、冷雨ひさめびしょびしょ。内へひきかえして、傘さして出かけた。申し合せたところは、上野の山である。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
闇の中に冷雨ひさめにそぼぬれていた熊笹がガサッと、人間を袈裟けさがけに切ったような無気味な音を立てた。彼は慌てて窓を締めてカーテンを素早く引いた。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こう云ったのは総髪物々しく、被布ひふを着た一人の易者であった。冷雨ひさめがにわかに降り出したので、そこの仕舞家しもたやの軒の下に、五人は雨宿りをしたものと見える。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これが冷雨ひさめの常である。冷雨が上がった。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)