冴切さえき)” の例文
中空なかぞら冴切さえきって、星が水垢離みずごり取りそうな月明つきあかりに、踏切の桟橋を渡る影高く、ともしびちらちらと目の下に、遠近おちこち樹立こだちの骨ばかりなのをながめながら、桑名の停車場ステエションへ下りた旅客がある。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、見るからに外国製らしい銀色の十字型の短刀を夫人から渡されると、その冴切さえきった刃尖はさきを頭の上のシャンデリヤに向けながら、大笑いした自分の声を、今でもハッキリと記憶している。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)