八卦見はっけみ)” の例文
だが、八卦見はっけみではあるまいし、見ず知らずの人間が、きょう引越しすることを、いったいまあ、どうして言い当てることができたのであろう。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
老人は私の顔を天眼鏡でのぞいて見たり、筮竹ぜいちくをがちゃがちゃいわして見たり、まるで人相見と八卦見はっけみと一しょにやっていましたが、やがてのことに
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
八卦見はっけみだって、先生と言われています。どうやら、世の中から名士の扱いを受けて、映画の試写やら相撲の招待をもらうのが、そんなに嬉しいのかね。
或る忠告 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「下手に未練もたんと別れた方が身のためやぜ」などとそれが親の言う言葉かと、蝶子は興奮の余り口喧嘩までし、その足で新世界の八卦見はっけみのところへ行った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それがいわゆる八卦見はっけみ占い者の常套じょうとう手段といえば手段ですが、とにかくその前を通りかかると、突然、あなたには死相が浮かんでいるというようなことをいったのだそうで
つまり遊歴の八卦見はっけみ道者と化けすましたもので、宿を立ち出て、ほどなく、南大門にさしかかって見れば、さすが河北第一の大都たいと紫金しきんの瓦、鼓楼ころうの旗のぼり、万戸の人煙は、春のかすみを思わせて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八卦見はっけみや療養師や、インチキ・アンマや、目附の悪いのがくるようになり、彼らが昼間くる時はカリコミがあった時で、一時しのぎに逃げこんでいるのだから、ソワソワと落付かず、碁はウワの空で
八卦見はっけみじゃあるまいし、こんなことがどうして分るのです。それとも、あんた自身が、丁度この時間に、賊を逮捕して見せるとでもおっしゃるのですか」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
八卦見はっけみじゃあるめえし、おれにきいたってわからねえじゃねえか。だが、察するに鷹揚おうようなところを見ると、その子せがれは万事がきっと上品で、顔なぞも割合にやさ形だな」
「大旦那。八卦見はっけみをよんで参りました」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに店を張っていたじじむさい天神ひげの八卦見はっけみだったのです。