八十八やそはち)” の例文
秋が近くなつて、薄靄うすもやの掛かつてゐる松林の中の、清い砂を踏んで、主人はそこらを一廻ひとめぐりして来て、八十八やそはちという老僕のこしらへた朝餉あさげをしまつて、今自分の居間に据わつた処である。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
宴会のくずれとみえ、松岡町の『八十八やそはち』という料亭の印いりの傘を持っていた。
契りきぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ぼく八十八やそはちすすめる野菜の膳に向つて、飢をしのぐ。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)