先斗町ぽんとちやう)” の例文
祇園ぎをんの方から鴨川を西に渡つて、右へ先斗町ぽんとちやうへ入らうとする向ひ角の三階家で、二階と三階を宿屋に使ひ、下の、四条通りに面した方に薬屋を開いてゐたのだつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
七条新地はししたに女郎屋を、三条の方に鳥屋を、西石垣さいせきに会席料理屋を、先斗町ぽんとちやうに芸者屋をといふ風に、次から次へと新しい妾を蓄へては、その度毎に新しい店を一つづつもたせた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
数分の後、私は姉の背後うしろに身を隠すやうに寄り添ひながら伯父の家へ入つた。先斗町ぽんとちやう並びの広い玄関口の一方の柱には、斜に描いた瓢箪の下に旅館浪華亭と書いた瀟洒せうしや掛行燈かけあんどんが懸けてあつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)