侍小路さむらいこうじ)” の例文
そしてこんどは伊丹の侍小路さむらいこうじの古びた邸へ彼を導いた。そこは八弥太の住居で、彼の主人の伊丹わたるが来て待っていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一時ひとしきりは魔の所有もの寂寞ひっそりする、草深町くさぶかまちは静岡の侍小路さむらいこうじを、カラカラといて通る、一台、つややかなほろに、夜上りの澄渡った富士を透かして、燃立つばかりの鳥毛の蹴込けこみ、友染のせなか当てした
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
足軽三十人持の小頭こがしらといっては、まだその足軽よりすこししなくらいの生活でしかない。清洲きよす侍小路さむらいこうじの裏に、若い夫婦は、初めてささやかな家と鍋釜を持った。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嫁の寧子ねねといっしょに清洲の侍小路さむらいこうじの邸で静かに老いを養っている身であるが、つい二、三年前まで中村にいて百姓をしていたので、土に荒れた手はまだ指の節も太く
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)