佗住居わびずまひ)” の例文
潜門くゞりもん板屋根いたやねにはせたやなぎからくも若芽わかめの緑をつけた枝をたらしてゐる。冬の昼過ひるすひそかに米八よねはちが病気の丹次郎たんじらうをおとづれたのもかゝる佗住居わびずまひ戸口とぐちであつたらう。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
路地は其等の浮世絵に見る如く今も昔と変りなく細民の棲息する処、日の当つた表通からは見る事の出来ない種々さま/″\なる生活が潜みかくれてゐる。佗住居わびずまひ果敢はかなさもある。隠棲の平和もある。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)