伊達様だてさま)” の例文
しかし広い「お竹倉たけぐら」をはじめ、「伊達様だてさま」「津軽様つがるさま」などといふ大名屋敷はまだ確かに本所の上へ封建時代の影を投げかけてゐた。……
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕等は両国橋りやうごくばしたもとを左へ切れ、大川おほかはに沿つて歩いて行つた。「百本杭ひやつぽんぐひ」のないことは前にも書いた通りである。しかし「伊達様だてさま」は残つてゐるかも知れない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
流転るてんの相の僕をおびやかすのは「伊達様だてさま」の見えなかつたことばかりではない。僕は確かこの近所にあつた「富士見ふじみわたし」を思ひ出した。が、渡し場らしい小屋は何処どこにも見えない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)