他国者よそもの)” の例文
野婦之池あたりにうろついていてくれればよいが、駒ヶ岳のふところへでもはいりこんだら、もう他国者よそものの衆に知れることじゃない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他国者よそものだけに、江戸には身寄りも無いらしく、かつて親類の噂などを聞いたことも無いと云った。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「お嬢様、どうしてそんなことがございましょう、わたしは他国者よそものでございますから」
お互のことだが、他国者よそものはつろうござんすな
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
両替屋出入りの客などをお花客とくいにして、大きな商賈しょうことなっているうえ、渡り職人や、旅稼たびかせぎの女芸人にいたるまで、他国者よそものが入市するには、ぜひとも
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「元よりです。けれど幸い、山木家の郎党にも、兼隆の一族にも、てまえは少しも顔を知られておりません。他国者よそもので、身分のないのが僥倖しあわせです。さっそく、取りかかりましょう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長州のはぎと山口の勢力下ではあったが、比較的に雑居的ではあり、旅客が多いために他国者よそもの扱いもうけないし、そして、また名物の河豚ふぐの味にも食い馴れて、二年以上も住んで来たので
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、どこへ行っても、この他国者よそもの夫婦は、土地性に合わない、肌を持っているために、稼業かぎょうにはありついても、人交際ひとづきあいとか、習慣とかに、馴じみきれず、一年と居着いた土地はないのであった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)