人穴ひとあな)” の例文
それから、全くめちやくちやな石ころ道を下りて、人穴ひとあなの村に出るまでに、私は馬がつまづいて二度までも投げ出されさうになつた。
湖水めぐり (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
「お待ちあそばせや、伊那丸さま。人穴ひとあなの殿堂は、この咲耶子がそらんじている道、踏みやぶる間道かんどうをごあんないいたしましょうぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここぞ御自分の畢生ひっせいの御修行場と思召して、お頂上、中道ちゅうどう人穴ひとあな、八湖、到るところであらゆる難行苦行をなさいました、それからいったんお国許へお帰りになりまして
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人穴ひとあなから燃えひろがった野火のびは、とどまるところを知らず、ほうにわたって、濛々もうもうと煙をたてているので、下界げかいのようすはさらに見えない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなのもの、わしはこれからすぐ人穴ひとあなの殿堂へけいり、呂宋兵衛るそんべえの首を剣頭にかけて、祖先におわびをいたすつもりだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)