亜鉛葺トタンぶ)” の例文
今日こんにち回向院ゑかうゐんはバラツクである。如何いかきんもんを打つた亜鉛葺トタンぶきの屋根はつてゐても、硝子ガラス戸を立てた本堂はバラツクと云ふほかに仕かたはない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし何処どこを眺めても、亜鉛葺トタンぶきのバラツクのほかに「伊達様」らしい屋敷は見えなかつた。「伊達様」の庭には木犀もくせいが一本秋ごとに花をつてゐたものである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
けれども今は薄汚うすぎたない亜鉛葺トタンぶきのバラツクのほかに何も芝居小屋らしいものは見えなかつた。もつとも僕は両国の鉄橋に愛惜あいじやくを持つてゐないやうにこの煉瓦建れんぐわだての芝居小屋にも格別の愛惜を持つてゐない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)