乞丐きっかい)” の例文
奇絶なる鼻の持主は、乞丐きっかいの徒には相違なきも、あながち人の憐愍れんみんを乞わず、かつて米銭の恵与を強いしことなし。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
但し、これは、李小二が、何故、仙にして、乞丐きっかいをして歩くかと云う事を訊ねた、答なのだそうである。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これすなわち社会間の生存競争にして、勝ちてはたちまち紳士となり、敗るればたちまち乞丐きっかいとなるのみならず、生計の困難より種々の病患を引き起こすに至る。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
乞丐きっかいの間から木下藤吉郎のような大物が生れ出でても、その系図の粉飾には苦心惨憺したものです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
吾を以てこれをはかるに、我が国に乞丐きっかい甚だおおければ、彼れ必ず貧院を起こし、棄児甚だ衆ければ、彼れ必ず幼院を設け、疲癃ひりゅう残疾、貧賤にして治療するあたわざるもの甚だ衆ければ
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
途中斑鳩いかるがの駅というを過ぎた時、聖徳太子の由緒の寺があって、参りはせなかったが、かつて見た書物に、『斑鳩やとみの小川の絶えばこそ我が大君の御名は忘れじ』と歌を詠した乞丐きっかい
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)