下腹したっぱら)” の例文
「それどころか、曳舟の推進機スクリューで、首のなくなった奴を、この眼で見てきたんだ。下腹したっぱらを一文字にやられてね、しかも、ったそいつが、左利きときてるんだ」
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
畳をつかむように、うたいながら猪口ちょこを拾おうとする処、ものの本をまだ一枚とうたわぬさき、ピシリとそこへ高拍子を打込んだのが、下腹したっぱらへ響いて、ドン底から節が抜けたものらしい。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとい這出はいだしたところでぬらぬらとやられてはおよそ五分間ぐらい尾を出すまでにがあろうと思う長虫と見えたので、やむことをえずわしまたぎ越した、とたんに下腹したっぱら突張つッぱってぞッと身の毛
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぼたんをはずして、胸を開けて、けばけばしゅう襟飾えりかざりを出した、でっぷり紳士で、胸が小さくッて、下腹したっぱらの方が図ぬけにはずんでふくれた、脚の短い、靴の大きな、帽子の高い、顔の長い、鼻の赤い
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)