上戸じやうご)” の例文
周子の云つた通り、此奴は若しかすると泣き上戸じやうごとかいふ病ひかも知れないぞ——彼は、さう思つた。(十二年五月)
熱海へ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ともすると連中一同が調子をはずして大騒ぎをすることがある。宮川君丈が上戸じやうごであとはみんな下戸げこであつた。その下戸の種田君に追分と云ふおはこがあつた。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
「加賀の歸り高堂の前をば通らねばならぬ處ながら、直通すぐどほりにて、其夜は雲嶺へ投宿のやうに申候、是は一杯飮む故なるべし。」天民の上戸じやうごは世の知る所である。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
笑ひ上戸じやうごの七平は、しりを端折ると、手拭をすつとこ冠りに四十男のはぢも外聞もなく踊り狂ふのでした。
が、たうとう我慢のならなくなつた笑ひ上戸じやうごの吉田が、雞の締め殺されるやうな奇聲を上げてしてしまつたので、それに釣り出されたみんなの笑ひ聲が堤の切れたやうにどつとほとばしつた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
我れ頼隆よりたかは、日ごろ上戸じやうごにて候ふ……
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それにあなたは一寸泣き上戸じやうごぢやないかしら、昨夜も終ひに其処で泣いたわよ。」
熱海へ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)