一襞ひとひだ)” の例文
あらゆるものの中で海はとりわけ私にとつてたくさんの陥穽かんせいに満ちてゐる。私はともすれば飜る波の一襞ひとひだにも古い記憶の合図を見るのだ。
恢復期 (新字旧仮名) / 神西清(著)
割合に詰ったあごの真下から、一襞ひとひだになって、ただ一枚のむらさきえんまでふわふわと動いている。そでも手も足も見えない。影は廊下に落ちた日を、するりと抜けるように通った。あとから、——
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)