一番ひとつが)” の例文
残った二、三羽の小鳥は一番ひとつがいのチャボにかえられて、真白なチャボは黄なカナリヤにかわって、彼の籠を占領して居る。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
武一は、もう今ではこの一番ひとつがひより他に残つてゐない伝書鳩ハンスを籠から取り出して、可憐で堪らなさうに頬を寄せてゐた。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
奉行ちょうど膳に向い、鶏、一番ひとつがいを味わわんとするところで、この鶏復活したらそんな話も信ぜられようと言うや否や、鶏たちまち羽毛を生じて起ち上った。
それはまるで一番ひとつがいの渡り鳥が、捕えられて別々のかごに養われているようなものだった。
一番ひとつがいの朱錦を小さい塗桶のようなものに入れて、元吉が大切にかかえて行った。
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
放飼ひに慣れた一番ひとつがひの丹頂が悠々と泉水の合間に遊び、橋を渡つて築山のちんのほとりで居眠りをしたり、翼を伸して梢に駆り空に呼応の叫びを挙げたりしてゐる。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
その一番ひとつがいは亭主の安蔵の死ぬ五、六日前に、千住の問屋から仕入れた鶏で、店を仕舞う時にこの一つがいだけがつぶされずに残ったので、ともかくも品川まで持って行って、自分の家に飼って置くと
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
去年までは一番ひとつがひゐた丹頂が今は雄だけが一羽残つてゐた。
鶴がゐた家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)