一沫いちまつ)” の例文
行手の丘にこの国の古い大きな建物がそびえているのを臨む。かつての庁舎だというが、この港に一沫いちまつの潤いを与え、辺りの景色を引き立たせてくれる。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
一沫いちまつの雲もなく、太陽は娯楽園の山々谷々、奇怪なる建築物の数々を、白と黒とのクッキリした陰影に染め為して、その全景を、立昇る陽炎かげろうと共に、鏡の青空へそのまま投影させているかに見えた。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
最後にふり返った時には、一沫いちまつの雲が寿真をおおうように見えていた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)