一悶着ひともんちゃく)” の例文
それで、お前さんのにいさんには半月近くも、顔は合わせないようにしているとね、太郎さんがこんな事を知ってごらん。また、お前さん、一悶着ひともんちゃくだろう。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もし、船頭が眼でも醒まそうものなら、一悶着ひともんちゃくを免れないが、幸いにその事もなく舟は向うの岸に着く。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おそらく父自身にしても、今ではもう別荘べっそうに残っていたくはなかったろう。ただし、父は、この際になってまた一悶着ひともんちゃくもちあげないように、首尾しゅびよく母を説きつけたらしかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
いかに大作であるかは、そのうちのあるものを描くため彼は場所に困って寺院を借りようとしたところが、僧侶が彼を異端者あつかいして、貸す貸さないで一悶着ひともんちゃくあったというのでも知れよう。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)