一川いっせん)” の例文
平八郎以下、息もつかずに、ここまで来て、一川いっせんを中に、対岸をながめた士卒は、騒然と、指さしたり、小手をかざして、武者ぶるいした。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜半、月の光が一川いっせんの蘆と柳とにあふれた時、川の水と微風とは静にささやき交しながら、橋の下の尾生の死骸を、やさしく海の方へ運んで行った。
尾生の信 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
へだ一川いっせんはいうまでもなく木曾の上流。岩に鳴る水や瀬にしぶく水の響きはするが、ふかい水蒸気につつまれて、月も山も水も雲母きららの中のもののようだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)