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さいた
これが
今日のおしまいだろう、と
云いながら
斉田は青じろい
薄明の
流れはじめた県道に立って
崖に
露出した
石英斑岩から一かけの
標本をとって新聞紙に包んだ。
斉田は岩石の
標本番号をあらためて
包み直したりレッテルを
張ったりした。そしてすっかり夜になった。
泉はまるで一つの
灌漑の
水路のように
勢よく岩の間から
噴き出ていた。
斉田はつくづくかがんでその
暗くなった
裂け目を見て
云った。(
断層泉だな。)(そうか。)
いかに
才長けた、
戦上手の男とはいえ。とか。