-
トップ
>
-
こちょうじん
旅の
途中で、
煙草畑に葉をつんでいる少女に
会った。少女はついこのあいだ、
緋おどし
谷から
里へ帰ってきた
胡蝶陣のなかのひとり。
いわゆる和冦の異称たる
胡蝶陣の名は、堂々たる大
明の朝廷をして
困頓せしめ、沿海の人民をして、
胆肝を寒からしめたり。
裾野にいたころは
富士の
山大名の
娘——
胡蝶陣の
神技——
猛獣のような
野武士のむれを自由
自在にうごかした咲耶子である。
さすがの
胡蝶陣に
妙をえた
咲耶子も、いまはほどこすに
術もなくなった。
精鋭無比の彼女の部下の
刃も、いまはしだいしだいに疲れてくるばかり。