じゅん)” の例文
が、最後に彼と彼の家庭の調子が程好く取れているからでもあり、彼と社会の関係がぎゃくなようで実はじゅんに行くからでもある。——話がつい横道へれた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに近づくと、「さ、降りねば……」と、奥に坐っていた老人がからだを振り向けて、車の中を一じゅん見た。
遠野へ (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
うしとらたつ、——と、きゃくのないあがりかまちにこしをかけて、ひとり十二じゅん指折ゆびおかぞえていた、仮名床かなどこ亭主ていしゅ伝吉でんきちは、いきなり、いきがつまるくらいあらッぽく
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
長男は九年前に病死し、四男はそれよりずっと前、まだ中学生の時代に夭死ようしした。昨年また亮が死んだので、残るはただ三男のじゅんだけである。順はとくにいでて他家を継いでいる。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水野みずのさんは、とおくにしなすって、学校がっこう退きましたから、いているせきじゅんにつめてください。」といわれました。正雄まさおは、はじめてそれとってびっくりしてしまったのです。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほんがみつかったので、講堂こうどうはしってかえると、もう生徒せいとらはおいのりの整列せいれつをしていた。せいじゅんなが行列ぎょうれつつくっているので、小さいのは前の方で聖像せいぞうに近く、大きいのはうしろに立っている。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
日清にっしん 日露にちろ 日華にっか とじゅんをおって古びた石碑せきひにつづいて、新らしいのはほとんど白木しらきのままのちたり、たおれているのもあった。そのなかで仁太や竹一や正のはまだ新らしくならんでいた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「やっぱりやられるよ。なんの足しになるものか。じゅんぐりにやられるんだ」
洞窟どうくつを背景に、ひとつの賊殿ぞくでんともいえる山寨さんさいを築造し、そのかしらは姓をえん、名をじゅんといい、あだ名を錦毛虎きんもうことよばれているものだった。——もとは山東莱州らいしゅうで馬や羊の売り買いをしていた博労ばくろうなのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
としをとったおかあさんのおじゅん一人ひとりいるだけなのです。
きみたちはじゅん々にされ
したのではもとよりなく、きのうもきょうもと、二日二晩ふつかふたばんかんがいた揚句あげくてが、隣座敷となりざしきちゃれているとせての、雲隠くもがくれれがじゅんよくはこんで、大通おおどおりへて、駕籠かごひろうまでの段取だんどりりは
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、おかあさんのおじゅんがやさしくむかえました。