たい)” の例文
もう一と押しというところでいつもたいかわす、あのみごとさはどうだ、と彼は思った。彼はよく考えてみて、それから独りで笑った。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかるにその日偶然にも二たいの上人の作が私の目に映ったのです。目に映ったという方が応わしいでしょう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
こしをだにくる所もなく、唯両脚を以てたいささへて蹲踞そんきよするのみ、躰上に毛氈もうせんと油紙とをかふれども何等なんらこうもなし、人夫にいたりては饅頭笠まんじうがさすでに初日の温泉塲をんせんばに於てやぶ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
師走しはすつき世間せけんたいものせわしきなかを、ことさららみて綾羅きらをかざり、一昨日おとゝひそろひしとそれ芝居しばゐ狂言けうげんをりから面白おもしろ新物しんものの、これをのがしてはと娘共むすめどもさわぐに、見物けんぶつは十五日
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一海賊は猛虎のごとくおどりかかりヤット一声船長を斬りさげたり、船長のたいは真二つに割れ、悲鳴を揚ぐるいとまもあらず、パッタリと倒る、血は滾々こんこんと流れて、その辺は一面に真紅となれり
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
世にはたいすこやかなるが為に心健かならざるもの多ければ、常に健やかなるものゝ十日二十日病床に臥すは、左まで恨むべき事にあらず、してこの秋の物色けしきに対して、命運を学ぶにこよなき便よすがあるをや。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
片手で払い落とした隙を、ドッとあてたたいにあたり!
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「これだけ長いあいだ逢っていながら、いつもうまくたいかわされておあずけばかりだ、このあいだの伊賀正のときだってそうだろう」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
海中かいちう魚族ぎよぞくにも、優勝劣敗ゆうしやうれつぱいすうまぬかれぬとへ、いまちいさ沙魚ふかおよいでつたなみそこには、おどろ巨大きよだいの一りて、稻妻いなづまごとたいをどらして、たゞくちわたくしつりばりをんでしまつたのだ。
けうに乗じて横臥わうぐわすれば、時々笹蝨ささむしたいして眼をますあり、痛痒つうしやう頗るはなはだし、之れささを臥床となすを以て、之に寄生せるむしひ来れるなり、夜中吉田署長きうに病み、脉搏みやくはく迅速にして発熱はつねつ甚し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
そのときおみのは十九で、そろそろ縁談が断われなくなっていたが、「ぐず」と云われるにしては芯が強く、やんわりとたいかわしてきた。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
山勢さんせいほとんど直立、くわふるに突兀とつこつたる危岩きがん路によこたはるに非れば、佶倔きつくつたる石南樹のたいさへぎるあり、し一たびあしあやまらんか、一てん忽ち深谷しんこくつるを以て、一行の両眼はつねそそぎて頭上の山頂さんてうにあり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
吹っかけ、そのため老人たちにうまくたいかわされてしまった、いや、こっちが左遷されたという結果が、そのまま重職諸公に躰を躱されたことになるのさ
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
徳利の口から飲むとみえたが、いきなりひじを返して徳利を投げつけ、喜兵衛がたいかわすところへとびかかった。
霜柱 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「きっと講釈入りで教えようってえこんたんだろうが、あのじじいのぶくぶく肥えたずうたいを見るだけで、おらあ胸がむかついてくるんだ、まっぴら牛蒡ごぼうのとんぼ返りだ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして巻いた反故紙を取り出すと、それを両手で持ったまま、敏捷びんしょうに七十郎へとびかかった。殆んど躯を叩きつけるような勢いで、七十郎は思わずたいかわしたくらいであった。
「力ではない術だ、そのうえやわらはたいさばきが敏捷びんしょうで、刀法とはまったく進退動作が違う、確言はできないが、おれの眼で見たとこだと、彼はたぶん柿崎に勝つだろう、十中八九まで勝つだろうと思う」
たいかわしてはいけない、本心と本心でぶっつかるときだ。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
又四郎は辛うじてたいかわすのであった。
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)