)” の例文
夜半よなか咽喉のどりつくような気がして、小平太は眼を覚した。気がついてみると、自分はちゃんと蒲団の上に夜着をけて寝ていた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
浅井は初めてそこへ落ち着いたお増に、酒のしゃくをさせながら笑った。もうセルの上に袷羽織でも引っけようという時節であった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
にしきふちに、きりけて尾花をばなへりとる、毛氈まうせんいた築島つきしまのやうなやまに、ものめづらしく一叢ひとむらみどり樹立こだち眞黄色まつきいろ公孫樹いてふ一本ひともと
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
帰る時、誰やらがうしろから外套をけて呉れた様だつたが、賑やかに送り出されて、戸外そとへ出ると、菊池君が私のそばへ寄つて来た。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
惣治も酔でも廻ってくると、額にぶさる長い髪を掌でで上げては、無口な平常に似合わず老人じみた調子でこんなようなことを言った。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
どうもその砂が波を揚げて来るので荷物は砂にぶされてしまうし、バアーッと眼の中へ吹き込むから眼を開いて歩くことが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
中の君の上に柔らかな地質の美しい夜着をけ、まだ暑さもまったく去っているという時候でもないのであるから、少し自身は離れて寝についた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのうち磯が眠そうに大欠伸おおあくびをしたので、お源は垢染あかじみ煎餅布団せんべいぶとんを一枚敷いて一枚けて二人一緒に一個身体ひとつからだのようになって首を縮めて寝て了った。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
また少女の姿は、初めてひし人を動かすにあまりあらむ。前庇まえびさし広く飾なきぼうぶりて、年は十七、八ばかりと見ゆるかんばせ、ヱヌスの古彫像をあざむけり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
薄青い紗のきれのようなものをけて置いて、それを通して読者に種々なる相を示して居るのでございます。
歌を半ばにして、細君のけた蒲団ふとんを着たまま、すっくと立上って、座敷の方へ小山の如く動いて行った。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
花は第十六図「イ」に示すが如くその体上に毛をぶり花穎は図中「ロ」の如き状を成し粰穎は「ハ」の如くしかして下に雌雄両蕊ならびに三片の被鱗を擁せり。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
酒屋男は罰ぶらんが不思議、ヨイヨイ、足で米といで手で流す、ホンニサイバ手で流す。ヨイヨオイ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
私がそのような世間的の甲羅や着物をむっているという事は、かえっていけない事ではあるまいか。
それは永い涙の忍従と苦がい/\血とによつて漸々やう/\皮をぶせた許りの深い傷手いたでであつた。
こもけて有りましたから、死顔は見えません、濡乱れた黒髪ばかり顕れていたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一人は頭が大きく、額が広くつて、目は豕の様に狭く、外の一人の顔は丸で鼻計りで出来て居る様で、その上から赤い鳥の羽で飾つた、白い棒砂糖形の帽子がぶさり掛つて居ます。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
この阿呆のど不具かたわめ。大根やこしお前の口へ入るものじゃねえだぞ。お前なんかに、粟の飯一杯も惜しいけどな、同じ人間の皮ぶってるけにな、毎日一杯ずつ恵んでやっとるんじゃ。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
上の間の唐紙は明放しにして、半ば押しけられた屏風の中には、吉里があちらを向いて寝ているのが見える、風を引きはせぬかと気遣きづかわれるほど意気地のない布団のけざまをして。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
じゃア斯うしましょう、知れないように頭巾でもぶらせ、扮装なりを変え、浜町の灯台のところへあの御婦人は待たして置いて、貴方はお一人で御番所を通って、それから岩の処で御婦人を
向うから来た釜形かまがたとがった帽子をずいて古ぼけた外套がいとう猫背ねこぜに着たじいさんがそこへ歩みをとどめて演説者を見る。演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの村夫子そんぷうしのたたずめる前に出て来る。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あね小袖こそでをそとつぎ
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
お増は押入れから自分の着物を出して来て、せなかけたり、火鉢の抽斗ひきだしから売薬を捜して飲ませたりしたが、磯野の腹痛は止まなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
薄 なおその上に、御前様ごぜんさま、おせ遊ばしておがまれます。柳よりもお優しい、すらすらと雨の刈萱かるかやを、おけ遊ばしたようにござります。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、一段声を低めて「あの破火鉢やぶれひばちに佐倉が二片ふたつちゃんといかって灰がけて有るじゃア御座いませんか。 ...
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
奥様から頂いた華美はでしまの着古しに毛繻子けじゅすえりを掛けて、半纏はんてんには襟垢えりあかの附くのを気にし、帯は撫廻し、豆腐買に出るにも小風呂敷をけねば物恥しく、酢のびんは袖に隠し、酸漿ほおずき鳴して
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その顏がまた、彼の惘乎ぼうとなつた眼の前に、室いつぱいに擴大されて行くやうな變異な相貌となつて、おつぶさつて來るやうに見えた。彼はすつかり、窒息的な呼吸遣ひに陥いつてゐた。
奇病患者 (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
此頃着いた許りの、新しい三十二面刷の印刷機ロールには、白い布がけてあつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あゝ、あのやなぎに、うつくしにじわたる、とると、薄靄うすもやに、なかわかれて、みつつにれて、友染いうぜんに、鹿しぼり菖蒲あやめけた、派手はですゞしいよそほひをんなが三にん
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
芝居のなかも暗く時雨しぐらんだようで、底冷えが強く、蒲団をけていても、膝頭ひざがしらが寒かった。叔父は背筋へ水をかけられるようで、永く見ていられなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
食ふ人も食はぬ人もあつたが、飯が濟むと話がモウはずんで來ない。歸る時、誰やらが後から外套をけて呉れた樣だつたが、賑やかに送り出されて、戸外そとへ出ると、菊池君が、私の傍へ寄つて來た。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、襟の扇子をと抜いて、すらすらと座へ立った。江戸は紫、京はべに、雪の狩衣けながら、下萌したもゆる血の、うら若草、萌黄もえぎ難波なにわの色である。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻さっき出て行ったままに、鏡立てなどが更紗さらさきれけた芳村の小机の側に置かれて、女の脱棄てが、外から帰るとすぐ暖まれるように余熱ほとぼりのする土の安火あんかにかけてあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
智恵子は白いきれを膝にけて、余念もなく針を動かしてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
蜘蛛くもの糸より弱うても、わしが居るからいわいの、さあ/\立つて取らつしやれ、けるものはの、ほかにない、あつても気味が悪からうず、わかい人には丁度ちょうど持つて来い
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「それじゃね、晩にお刺身を一人前……いいかえ。」と言って、お国は台所の棚へ何やらしまい込んでから、茶のへ入って来た。やわらかものの羽織を引っけて、丸髷まるまげに桃色の手絡てがらをかけていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
で、衣服きものけ、彫像てうざういだいたなり、狐格子きつねがうしあらためてひらいて立出たちいでたつる
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お辻は寒さをするむすめで、夜具やぐを深くけたのである。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)