はぢ)” の例文
阿父さんはこの家業を不正でないとお言ひなさるが、実に世間でも地獄の獄卒のやうに憎みいやしんで、附合ふのもはぢにしてゐるのですよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わが日頃ひごろちかひそむくものなればおほせなれども御免下ごめんくだされたし、このみてするものはなきいやしきわざの、わが身も共々とも/″\牛馬ぎうばせらるゝをはぢともせず
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「あつしのはぢなんざ三年でも五年でも我慢しますが、この樣子では曲者は、次の惡企わるだくみを考へてゐるに違ひありません」
朝日あさひかげたまだれの小簾をすにははぢかヾやかしく、むすめともはれぬ愚物ばかなどにて、慈悲じひぶかきおや勿体もつたいをつけたるこしらごとかもれず、れにりてゆかしがるは
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれ坂井さかゐいへに、たゞいやしくもまぬかれんとする料簡れうけんつた。さうして、その目的もくてきたつするために、はぢ不愉快ふゆくわいしのんで、好意かうい眞率しんそつちた主人しゆじんたいして、政略的せいりやくてき談話だんわつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
星の如くふるふわがはぢの身のれたらば
長命ながいきや、はぢかい、地獄の夕焼
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蒼ざめがほのはぢのおも
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
けふ見かへせばはぢしに
都喜姫 (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
常にはぢと、恨みと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
貴方からそんなにきらはれてゐるのですから、私もさう何時まで好いはぢを掻かずとも、早く立派に断念して了へばいのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
つくづく思へば無情つれなしとても父様ととさま真実まことのなるに、我れはかなく成りて宜からぬ名を人の耳に伝へれば、残れるはぢが上ならず、勿躰もつたいなき身の覚悟と心のうち詫言わびごとして
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わけのわからぬ事をわめくと、お小夜の手はかぎの如く曲つて、十本の指は、喉から胸へと、滅茶々々に掻きむしりながら、はぢも外聞もなく、その邊をのた打ち廻るのです。
うさぎおこるし、かにはぢょかくし
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うつし世の命をはぢ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「私はもしも遣損やりそこなつて、はぢでもさらすやうな事が有つちやと、それが苦労に成つてたまらなかつたんだから、これでもう可いわ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あのお孃さんと言ふのは、恐ろしく取すまして居るくせに、日本一の轉婆娘でした、私を一日一と晩おもちやにして、散々はぢを掻かせた上、ポイと放り出してしまつたんです。
このやう取次とりつぎするなとさへおつしやりし無情つれなさ、これほどはぢをとこの、をめをめおやしきられねば、いとまたまはりて歸國きこくすべけれど、たま田舍ゐなかには兩親りやうしんもなく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うつし世の命をはぢ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
それはお前が嫌やだといふのも知れてるけれども何卒どうぞれの肩を持つて、横町組のはぢをすすぐのだから、ね、おい、本家本元の唱歌だなんて威張りおる正太郎をとつちめてくれないか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「下谷淺草の若い者で、お銀さんを知らなきや——男のはぢだとね」
れにはらぬおやむかし、かたるまじきことれもめ、父君ちヽぎみさらなり母君はヽぎみにもいへはぢとてつヽむを、かせまゐらするではなけれど、一しやうに一打明うちあものがたり、きいたまはれ素性すじやう
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「チエツ、親分の氣も知らねえで、勝手にはぢを掻きやがれ」
お樂はツイはぢも忘れて、聲を立てゝ泣きます。
さすがにはぢらう風情で操は首を垂れます。
お萬のはぢらひはなか/\です。