こめ)” の例文
大原はもどかしそうに「イイエ貴嬢のお拵えなすったのが何よりです」と言葉に力をこめて言えど娘はよくも聞取らずして台所へ立って行く。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こめし櫻山めぐふもとに風かほる時は卯月うづきの末の空花の藤枝ふぢえだはや過て岡部に續く宇都うつの山つたの細道十團子とほだんご夢かうつゝにも人にもあはぬ宇都の谷と彼の能因のういんが昔を今にふりも變らぬ梅若葉鞠子まりこの宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ちからこめて、むかうへしてたがかうがないので、手許てもとくと、さつひらいた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
殺さなければならないほどの強いつよい悪因縁、これをこめ犯人ほしのこころもち、これにぶつかれば謎はもう半ば以上解けたも同じことである。この人殺しのこころを藤吉は常から五つに分けていた。
お花は心得たりと貞宗さだむね短刀たんたうを以て切結きりむすぶに女なれども喜内の妹ゆゑかねて手におぼえも有其上兄のかたきと思ひ一心こめ切立きりたてれば吾助もあなどがたくや思ひけん爰を專途せんどと戰ふ程に友次郎も忠八も手にあせ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こめたりける此所は名におふ周智郡すちごほり大日山のつゞき秋葉山の絶頂ぜつちやうなれば大樹だいじゆ高木かうぼく生茂おひしげり晝さへくら木下闇このしたやみ夜は猶さらに月くら森々しん/\として更行ふけゆく樣に如何にも天魔てんま邪神じやしん棲巣すみかとも云べきみねには猿猴ましらの木傳ふ聲谷には流水滔々たう/\して木魂こだまひゞき遠寺ゑんじかねいとすごく遙に聞ば野路のぢおほかみほえて青嵐颯々さつ/\こずゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)