ばかり)” の例文
常は何とも思はぬ島田が今日ばかりは恥かしいと夕ぐれの鏡の前に涕ぐむもあるべし、菊の井のお力とても惡魔の生れ替りにはあるまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この本質的なものと、時代の慷慨的なものとが微妙に結びついて、その年の三月には、「いでやあれしは敷島のうたばかりか」
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
堀ばた通り九段のあたりふきかくる雪におもてむけがたくて頭巾ずきんの上に肩かけすつぽりとかぶりて、折ふしばかりさし出すもをかし、種々の感情胸にせまりて
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いつたい蔵ハふだんニハ、やかましくにくまれ口チばかりいゝてにくまれ候へども、いくさになると人がよくなりたるよふ、皆がかわいがるよしニて、大笑致し候事ニて候。
いでやあれにあれしは敷島のうたばかりか、道徳すたれて人情かみの如くうすく、朝野の人士、私利をこれ事として国是の道を講ずるものなく、世はいかさまにならんとすらん、かひなき女子をなご
一葉の日記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
その周り十五丈ばかり。湯気赤くして泥土でいどありすなわち海地獄の事なるべし。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
然る処に板倉内膳正殿在京之節、吟味之上人数三拾四人に相極り、小鳥之殺生ばかり致旨にて、小鳥札被出置候。其後所司代に札被指出候処、内藤大和守殿所司之時分より、札不相渡候。
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
つねなんともおもはぬ島田しまだがめ今日けふばかりはづかしいとゆふぐれのかゞみまへなみだくむもあるべし、きくのおりきとても惡魔あくまうまがはりにはあるまじ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまだよに出したるものもなく、我が心ゆくものもなし、親はらからなどの、なれは決断の心うとく、跡のみかへり見ればぞかく月日ばかり重ぬるなれ。
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
戦ニて命をとし候者の数ハ、前後八十名ばかりニて、蔵ハ八九度も戦場に弾丸矢石ををかし候得ども、手きずこれなく此ころ蔵がじまん致し候ニハ、戦にのぞみ敵合三四十間ニなり
とても相談の相手にはならぬの、いはゞ太郎の乳母として置いて遣はすのと嘲つて仰しやるばかり、ほんに良人といふではなく彼の御方は鬼で御座りまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
将来どんな境遇になっても友情に変りはないと云っているけれども「親密々々こはこれ何のことの葉ぞや」「いつはりのなきなりせばいかばかりこの人々の言の葉うれしからん」
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
馬によくのり劔も余程手づよく、長刀なぎなたも出来、チカラハなみ/\の男子よりつよく、先たとへバうちにむかしをり候ぎんという女の、力料ばかりも御座候べし。かほかたち平井(加尾)より少しよし。
とても相談さうだん相手あいてにはならぬの、いはゞ太郎たらう乳母うばとしていてつかはすのとあざけつておつしやるばかり、ほんに良人おつとといふではなく御方おかたおに御座ござりまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一、幕ハ夷艦を買入致す事を大ニ周旋、今又、二艘ばかり取入ニなるよふす様子
さる子細しさいあればこそ此處こゝながれにおちこんでうそのありたけ串談じようだん其日そのひおくつてなさけ吉野紙よしのがみ薄物うすものに、ほたるひかりぴつかりとするばかりひとなみだは百ねんまんして
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
同人も兼而かねて御申越ニてよろしき人物とてよろこび候所、色〻はなし聞候所何もをもわくのなき人ニて、国家の御為命すてるにくろふ苦労ハせぬ位なものニて、当時私ハ諸生五十人ばかりハつれており候得ども
と畳みかけておほする時我がはらわたゆるばかりに成りて、何の涙ぞまぶたに堪へがたく、袖につゝみてに泣きしや幾時いくとき
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼竹島ハ地図を以て側算ママすレバ、九十里ばかりなるべし。
嫌やだとつても此組の大將で居てくんねへ、左樣どぢばかりは組まないからとて面目なさゝうに謝罪わびられて見れば夫れでも私は嫌やだとも言ひがたく、仕方が無い遣る處までやるさ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五大才五代才助にハ火薬千金ばかり云云頼置候。
突當つきあたりの芥溜ごみためわきに九しやくけんあががまちちて、雨戸あまどはいつも不用心ぶようじんのたてつけ、流石さすがに一ぱうぐちにはあらでやま仕合しやわせは三じやくばかりゑんさきくさぼう/\の空地面あきぢめん、それがはじすこかこつて青紫蘇あをぢそ、ゑぞぎく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この文ハごく大事の事ばかりニて