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故
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せい
ふりがな文庫
“
故
(
せい
)” の例文
達子が自分を急き立ててるのはその
故
(
せい
)
だなと、昌作はふと考えついた。けれど、禎輔のそうした様子の方へ、彼の心は惹かされた。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
次第に短気のまさりて
我意
(
わがまま
)
つよく、これ一つは年の
故
(
せい
)
には御座候はんなれど、随分あたりの者御機げんの取りにくく、
大
(
おほ
)
心配を致すよし
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
偽
(
にせ
)
文明の悪風
漸
(
ようや
)
く日本の奥までも吹き込んで、時々この辺に来る高慢な
洋人輩
(
ようじんはい
)
や、軽薄な
都人士等
(
とじんしら
)
の悪感化を受けた
故
(
せい
)
もあろう。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
同じメリケン粉でも
伊太利
(
いたりー
)
や
仏蘭西
(
ふらんす
)
の南部の方から出るのは気候風土が日本に似ている
故
(
せい
)
か大層粘着力が多くって饂飩には極く上等です。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「でしょう。一体にこの辺の人は
強酒
(
ごうしゅ
)
です。どうしても寒い国の
故
(
せい
)
でしょうネ。これで塾では誰が強いか。正木さんも強いナ」
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
剛愎
(
ごうふく
)
な忠次も、打ち続く
艱難
(
かんなん
)
で、少しは気が弱くなっている
故
(
せい
)
もあったのだろう。別れるのなら、いっそ皆と同じように、別れようと思った。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
また好きな
初冬
(
はつふゆ
)
が来た。今年は雨が多いので、勤めに出かける人などは困つたらうと思ふ。しかしその雨の
故
(
せい
)
か、今年の紅葉の色は非常に好い。
初冬の記事
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
少し言い草は乱暴ですが八五郎の半間な調子に
業
(
ごう
)
を煮やした
故
(
せい
)
もあったでしょう。佐吉は
忌々
(
いまいま
)
しそうに舌打ちをしました。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
上品ではあツたが、口の
利方
(
ききかた
)
は
老
(
ま
)
せた方で、何んでもツベコベと
僥舌
(
しやべ
)
ツたけれども、調子の好かツた
故
(
せい
)
か、
他
(
ひと
)
に嫌はれるやうなことはなかった。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
新「それは誠にお気の毒様で、
然
(
そ
)
う見えたので……気の
故
(
せい
)
で見えたのだね……眼に付いて居て眼の前に見えたのだナ
彼
(
あれ
)
は……
斯
(
こ
)
んな綺麗な顔を」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
或
(
あるひ
)
はラブがなかつた
故
(
せい
)
かも
知
(
し
)
れぬ。
妻
(
つま
)
が
未
(
ま
)
だ
心
(
しん
)
から
私
(
わたし
)
に
触
(
ふ
)
れて
来
(
く
)
るほど、
夫婦
(
ふうふ
)
の
愛情
(
あいじやう
)
に
脂
(
あぶら
)
が
乗
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
ない
故
(
せい
)
かも
知
(
し
)
れぬ。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
つい広小路から近いので度々お邪魔にくる馬春堂の
故
(
せい
)
みたいに思われて、飛んだ飛ばッちりを食うという易のお言葉だ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三十
年
(
ねん
)
と
申
(
もう
)
すと
現世
(
げんせ
)
ではなかなか
長
(
なが
)
い
歳月
(
つきひ
)
でございますが、こちらでは
時
(
とき
)
を
量
(
はか
)
る
標準
(
めあて
)
が
無
(
な
)
い
故
(
せい
)
か、一
向
(
こう
)
それほどにも
感
(
かん
)
じないのでございまして……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
(私は、春の日光には耐えられないから、眼の弱い
故
(
せい
)
。床の間をつぶして北に窓をあけようかと思って居ります。)
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
殊
(
こと
)
に又ぞろ母からの無理な申込で頭を痛めた
故
(
せい
)
か、その夜は寝ぐるしく、怪しい夢ばかり見て我ながら眠っているのか、覚めているのか
判然
(
わから
)
ぬ位であった。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
急に安心をした
故
(
せい
)
か、この時初めて恐ろしい風だということに気が附きました。それまでは全く夢中でした。
幕末維新懐古談:14 猛火の中の私たち
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
気の
故
(
せい
)
か京都の秋は東京よりも星がはッきり見える。私は何も考えていないときの癖で星を仰いで歩いた。
幽霊を見る人を見る
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
その熱い
故
(
せい
)
だったのだろう、握っている掌から身内に浸み透ってゆくようなその冷たさは快いものだった。
檸檬
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
まだ酒に酔っていた
故
(
せい
)
か知らと、無理に理屈を附けても見たが、それも何だか覚束ない
様
(
よう
)
にも思われた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
乃公は委細構わずハンケチを
燃
(
もや
)
し始めたが、余り香水が沢山附いている
故
(
せい
)
か、燃えが悪い。けれども兎に角半焼ぐらいになったから、乃公は机の引出へ
投
(
ほう
)
り込んだ。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
出歩かない上に、満月の夜のあとさきは、海が明るいので昼だと思って、じっと砂にもぐっていて、餌一つとろうとしないそうですから、多分その
故
(
せい
)
かも知れませんよ。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「妾は人一倍一刻者、厭な人は厭、好きな人は好きと、こうきめて掛かる
故
(
せい
)
か、一層紋十郎さんは嫌いでござんす」花桐は深く眉を
顰
(
ひそ
)
め、さも厭そうに云うのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
利平は、
咽喉
(
のど
)
がつまりそうであった。それに熱でも出て来た
故
(
せい
)
か、ゾッと
寒気
(
さむけ
)
が背筋を走った。
眼
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
そして、それが幸子の
故
(
せい
)
だと云って、彼女は
鳥渡
(
ちょっと
)
でも姿をかくしたりすると、旻は一層亢奮して看護婦や女中を怒鳴りつけて、幸子を呼んでくれと云い張ってきかなかった。
勝敗
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
父親が
歿
(
なく
)
なると、男振りのよい
忰
(
せがれ
)
たちは
直
(
じき
)
に店をつぶしてしまった——
尤
(
もっと
)
もそれには御維新の
瓦解
(
がかい
)
というものがあった
故
(
せい
)
もあろうが——二人の忰はありったけの遊びをして
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ボクソウルは一応スミス船長に報告して、直ちに
狼煙
(
ロケット
)
の打揚げ方に掛ったのだが、キャリフォルニアンからは何の
応答
(
こたえ
)
もないが、気の
故
(
せい
)
か段だん近づいて来るようにも思える。
運命のSOS
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
気の
故
(
せい
)
だか
人気
(
ひとけ
)
がないように思われる。石子刑事ははっと顔色を変えて居間に飛込んだ。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
観世音がもつ、あの男でもない女でもない不思議な魅惑を、私は東洋の南方にむすびつけて考えたりした。私もまた文明の汚血よりの
恢癒
(
かいゆ
)
を祈っていたひとりだった
故
(
せい
)
もあろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
彼は長い間浮浪犬として
飢
(
ひも
)
じい目をした
故
(
せい
)
であろ、食物を見ると
意地汚
(
いじきた
)
なく
涎
(
よだれ
)
を流した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一つには一
同
(
どう
)
がひつそりとして
咳拂
(
せきばらひ
)
をもせぬ
故
(
せい
)
であらうが
極
(
きは
)
めて
明瞭
(
めいれう
)
に
聞
(
き
)
きとられた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
従妹
(
いとこ
)
に引とめられてしまつて、汽車に乗つたのはかれこれ晩の六時すぎでもあつたであらう、
夜
(
よる
)
の
故
(
せい
)
か乗客は割合に少ない、
今朝
(
けさ
)
手紙を
出
(
だ
)
して
置
(
お
)
いたから
家
(
うち
)
でも待つて居るであらう
夜汽車
(新字旧仮名)
/
尾崎放哉
(著)
子供が
戦争
(
いくさ
)
ごッこをやッたり、
飯事
(
ままごと
)
をやる、丁度そう云った心持だ。そりゃ私の技倆が不足な
故
(
せい
)
もあろうが、併しどんなに技倆が優れていたからって、
真実
(
ほんと
)
の事は書ける筈がないよ。
私は懐疑派だ
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
罪のない
幼児
(
おさなご
)
だからと漫然と思ったり、本能的な生活が幼児時代の特色だと、すべてのことを人の本能の
故
(
せい
)
に考えたりしているようですけれど、決して全然本能のみではありません。
おさなご
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
……あれも長いこと都の中で育った
故
(
せい
)
か、どうもあの軟弱な都の悪風に染まってしまって、
豪放
(
ごうほう
)
なところが欠けていて困る。あれだけは厳しく
躾
(
しつ
)
けて直さなければどうにもならんな。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
背の高い、細長い体に、厚ぼったい霜降りの外套を着て、後襟だけをツンと立てているが、うす紅色の球の大きなロイド眼鏡をかけている
故
(
せい
)
か眼の下の頬がほんのりと赤味をさしている。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「
左様
(
そう
)
なんかねえ、
年紀
(
とし
)
の
故
(
せい
)
もあろう、一ツは気分だね、お前さん、そんなに厭がるものを無理に食べさせない方が可いよ、心持を悪くすりゃ身体のたしにもなんにもならないわねえ。」
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「分らん、頭が混乱する
許
(
ばかり
)
だ。——ゆうべよく眠っていない
故
(
せい
)
かも知れない」
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
八重子は今まで所謂娘役
許
(
ばか
)
りして来た。
年齢
(
とし
)
の
故
(
せい
)
もあり、何時までも若い芸風の
故
(
せい
)
でもあらう。しかし、もう其処から一歩踏み出して、マダム役に入つて行く心構へが必要ではないかと思ふ。
先づ脱却すべきは
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
併し、気の
故
(
せい
)
か彼女の美しい
輝
(
かがやき
)
の顔に、不安の影が
颯
(
さっ
)
と通った様に思えた。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
姑
(
しゅうと
)
や小姑の多勢いた
家
(
うち
)
の妻になりきれなかったのはこの
故
(
せい
)
である。屈辱とも不義とも思わず
小日向
(
こびなた
)
水道町
(
すいどうちょう
)
の男の家へ誘われるがままに二度まで出掛て行ったのもまたこの性情によるのである。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さしもに広い法廷も立錐の余地がないくらい……普通の傍聴人や新聞社関係の人々は一人も入場を許さなかった
故
(
せい
)
か法廷内の空気は一層物々しく厳粛を極めておりましたようで……その真ん中に
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
佐々木繁氏来示には、陸中遠野地方で、草刈り誤って蛇の首を斬ると、三年経てその首槌形となり仇をなす。依ってかかる過失あった節は、われの
故
(
せい
)
じゃない、鎌の故だぞと言い聞かすべしというと。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
空腹の
故
(
せい
)
だったのです。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「それは
眼敏
(
めざと
)
くていらるる
故
(
せい
)
なんでしょうよ。元からそうでしたよ。それに年を取って来ると猶更そうなるものです。」
田原氏の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
女学生はかわるがわる茶を入れたり、
菓物
(
くだもの
)
を
階下
(
した
)
から持運んだりした。歩いて来た
故
(
せい
)
か、三吉ばかりは額から汗が出る。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
電車道の、
鋪石
(
ペーヴメント
)
が悪くなっている
故
(
せい
)
か、車台は
頻
(
しき
)
りに動揺した。信一郎の心も、それに連れて、軽い動揺を続けている。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さなきだに
不思議
(
ふしぎ
)
な
妖精界
(
ようせいかい
)
の
探検
(
たんけん
)
に、こんな
意外
(
いがい
)
の
景物
(
けいぶつ
)
までも
添
(
そ
)
えられ、
心
(
こころ
)
から
驚
(
おどろ
)
き
入
(
い
)
ることのみ
多
(
おお
)
かった
故
(
せい
)
か、その
日
(
ひ
)
の
私
(
わたくし
)
はいつに
無
(
な
)
く
疲労
(
つかれ
)
を
覚
(
おぼ
)
え
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
東北の農業の振わないのは、農事の困難なため、都会へ都会へと皆の気が向いて居る
故
(
せい
)
でも有ろうと思われる。西国の農民は富んで良い結果をあげて居る。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と
言
(
い
)
足した。近所から傳染病が出た
故
(
せい
)
でもあることか、其處らに人が住むでゐるとは思はれぬやうに静だ。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
苛税
(
かぜい
)
誅求
(
ちゅうきゅう
)
の結果、少しばかりの金を儲けたとて仕方なしとの、自暴自棄に陥った
故
(
せい
)
もあろうが、要するに大体の政治その宜しきを得ず、中央政府及び地方行政官は
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
“故”の意味
《名詞》
(ふる)使い古したもの。おさがり。
(ふる)年を経たこと。
(ふる)以前のもの。
(ゆえ、体言や活用語の連体形などに付いて用いられる)理由。わけ。特別な事情。
(ゆえ)由緒。
(ゆえ)おもむき。
(ゆえ)縁故。
(ゆえ)故障。
《形容動詞》
(ことさら)故意に。わざと。わざわざ。
(ことさら)とりたてて。とりわけ。特に。格別。
(出典:Wiktionary)
故
常用漢字
小5
部首:⽁
9画
“故”を含む語句
何故
故郷
事故
故障
故意
其故
縁故
故々
故家
所故
反故
故里
故事
故国
故人
物故
故主
何故々々
故買
故國
...