折節おりふし)” の例文
もう来そうなものだと待ち兼ねている光景で、折節おりふし飯時分になった、それにつけて来るのが遅いことである、ということである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
久さんのおかみは、び心に婆さん宅のへっついの下などきながら、喧嘩の折節おりふし近くに居合わせながら看過みすぐした隣村の甲乙を思うさま罵って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
折節おりふし年末の煤払すすはらいして屋根裏を改めると、棟木むなぎの間より杉原紙すぎはらがみの一包みを捜し出し、見るにかの年玉金なり。全く鼠が盗み隠したと分ったとあり。
これは、これまで幾度か同志に示したはずであるが、折節おりふし列席のない方もあったから、再び申し告げることにする。つまり、部署についてのことだ。
『七面鳥』と『忘れ褌』 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
旧幕府の末年に神田孝平たかひら氏が府下本郷通を散歩の折節おりふしたまたま聖堂裏の露店に最と古びたる写本のあるを認め、手に取りて見ればまぎれもなき蘭学事始にして
蘭学事始再版之序 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
折節おりふし千々岩は不在なりしを同僚のなにがし何心なく見るに、高利貸の名高き何某なにがしの貸し金督促状にして、しかのみならずその金額要件は特に朱書してありしという。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それは震災ぜん新橋の芸者家に出入していたと云う車夫が今は一見して人殺しでもしたことのありそうな、人相と風体ふうていの悪い破落戸ならずものになって、折節おりふし尾張町辺を徘徊はいかい
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
即ち十月一日より隔時観測を始めたり、折節おりふし天候不穏のちょうありしを以て、翌日剛力ら一同を下山せしめしため、予はいよいよ俊寛もよろしくという境遇となり、全く孤独の身となれり
おせんも年頃としごろきなおきゃく一人ひとりくらいはあろうかと、折節おりふしのおっかさんの心配しんぱいも、あたしのみみにはうわそらあぶりでんだお七がうらやましいと、あたしゃいつも、おもいつづけてまいりました。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
今年九十三歳になって中風の気味で郷里福岡の片傍かたほとりの伯父の家に寝ているのであるが、これをこの間久方振りに帰郷した時見舞いに行って見ると、折節おりふし伯父伯母は下女を残して外出の留守で
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
遠州秋葉の山奥などには、山男と云ふものありて折節おりふし出づることあり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
老「左様さ、獣も折節おりふし来ますが、第一泥坊が多いので困るでがす」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それを折節おりふし鳴って来た鐘が人に警告を与えて、あの時雨の音を聞きもらすまいぞよ、とそう言ったものとも取れぬことはない。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
折節おりふし一群の顧客噂に高い奇畜を見に来り、ダヴッド大恐悦の余り何の気も付かず欄辺に案内し、皆さんこれまでこんな活き物を御覧にならないでしょうというと
始終しじゅう居合刀を所持して、大阪の藩の倉屋敷に居るとき、又緒方の塾でも、折節おりふしはドタバタやって居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
二枚書けばたちまち筆渋りて癇癪かんしゃくばかり起り申候間まづ/\当分は養痾ようあに事寄せ何も書かぬ覚悟にて唯折節おりふし若き頃読耽よみふけりたる書冊しょさつらちもなく読返してわずか無聊ぶりょうを慰めをり候次第に御座候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
折節おりふし地震がゆった、その地震もそう烈しい地震ではなかった、野沢の水は春になって一面にち溢れているというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
その時の有様ありさまを申せば、江戸に居た書生が折節おりふし大阪に来て学ぶ者はあったけれども、大阪から態々わざわざ江戸に学びに行くと云うものはない。行けばすなわち教えると云う方であった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
折節おりふしに聞く浄瑠璃じょうるり一節ひとふしにも人事ひとごとならぬ暗涙を催す事が度々であった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日名子ひなこ氏が案内にたって大分市の元町にある磨崖まがいの石仏を見に行くことになった。折節おりふし同宿している五十嵐播水ばんすい君も共に。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
所でメールアイランドと云う処は町でないものですから、折節おりふし今日は桑港サンフランシスコに来いといって誘う。れから船にのって行くと、ホテルに案内して饗応すると云うような事が毎度ある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
旧幕府の末年に神田孝平氏が府下本郷通を散歩の折節おりふしたまたま聖堂裏の露店にと古びたる写本のあるを認め、手に取りて見ればまぎれもなき蘭学事始にして、かも鷧斎いさい先生の親筆に係り
蘭学事始再版序 (新字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
折節おりふしロンドンの子女しじょは春のさかりのなしの花や日本から移された桜の花の咲いておる中に三々五々歩を運んでおりましたが、その光景が日本の花の盛りに見る感じとはどことなく違っておりました。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)