布令ふれ)” の例文
もうし上げます。町はもうすっかり掃除そうじができてございます。人民じんみんどもはもう大悦おおよろこびでお布令ふれたずきれいに掃除そうじをいたしました」
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これは神仏混淆の例証ではありませんが、やはり神仏区別のお布令ふれからして仏様側が手酷てきびしくやられた余波から起った事柄であります。
ある時王様は国中にお布令ふれを出しました。そのお布令は、人民の中から王様の試験に合格した者を王子として選ぶといふのでした。
辞書と新聞紙 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
その結末と、籠城の準備を評議するという名目で、翌日、再集合の布令ふれをまわしてみると、登城人数は前の半分にも足らなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
午後一時に総員広場に集れの布令ふれが廻って、時はいよいよ目睫もくしょうに迫った。山田は蒼白くなっては度々水で口を濡しながら「サア往こう」と昂然として言う。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
大阪も、それを布令ふれろ、と、跡部に申したが、彼奴には判らん——ところで、又、盛之進様が、御出生になったのう
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
伝染病が襲うて来るも此月だ。赤痢せきり窒扶斯ちぶすで草葺の避病院が一ぱいになる年がある。真白い診察衣しんさついを着た医員が歩く。大至急清潔法施行の布令ふれが来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
生れた子を殺して「まびく」という、どこでもおこなわれているし、北国などでは藩で布令ふれを出した例もある。
明治九年の太政官のお布令ふれで、神仏を劃然かくぜんと区別し、神社の境内から、抹香臭いものは悉く追い出されました。
給仕はふるへながら理由わけを話した。それによると何月何日のお布令ふれに、自今若芽薑一切禁止といふ事があつたので、それ以来百姓が唯の一本も作らなくなつたのださうだ。
いとしいきさきのぞみとあれば、せめて、この最後さいごのぞみをもかなえてやりたいものだとおもわれたので、このことをくにじゅうに布令ふれされますと、わかおんなたちは、むすめも、女房にょうぼう
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、それにもかかわらず、正月八日から十四日まで行なわれる御斎会ごさいえは例年通りというお布令ふれが出たが、南都の僧の全滅した今となっては、顔ぶれを揃えるのも難しい。
れは今明日こんみょうにちの中にいよ/\事は始まると覚悟を定めた。その前に幕府から布令ふれが出てある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あの気性スピリットだから、攘夷派が二三度攻撃したからって、それで恐入ってしまうような弱気ウイークネスな男じゃない……入関禁制の布令ふれを聞くと、ケチのついた荷など引きとれねえというんで
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
これは昔饑饉のあった時お布令ふれが出たのをその儘守っているのだと申します。そこで彼処の家では顔の映るような茶粥を喰べているという形容が起って来ますが、お分りですか?
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
恩賞は望みに任すとまでの布令ふれが、発布されておるというありさまなのでございます。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そんなこたあねえだ。ゆんべは正式の布令ふれを廻したんぢやあんめえ。東京からたかさを
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
だんまりで辞令を下げておいて、蕎麦を食うな、団子を食うなと罪なお布令ふれを出すのは、おれのような外に道楽のないものにとっては大変な打撃だ。すると赤シャツがまた口を出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
表に東京市の四角な判が押してあり、裏は生年月日に芸名、落語協会長の判があって、「これを四六時中持って歩け」という御布令ふれがあって、これを持っていないと営業ができなかった。
(新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
御領主の富田樣から、お布令ふれが出た。あのお布令といふものが、自體氣に喰はね。村總體を一つの同じお布令で縛らうとしても、太いものがあつたり、細いものがあつたりして、工合よう行くものか。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
滅多には参りませんが来ても只村役人がお布令ふれの書付や何かを
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と関鉄之介が低い声で布令ふれた。
『七面鳥』と『忘れ褌』 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
減じられようというお布令ふれじゃ。だからもう、たとえおまえが帰ってつかまっても、たかだか軽い流罪ぐらいですむことじゃろうよ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政府はこの弊をめるがために神仏混淆を明らかに区別することにお布令ふれを出し、神の地内じないにある仏は一切取りけることになりました。
「そうか、それではまちがいあるまい。ああ、どんなにおちしただろう。すぐまち掃除そうじするよう布令ふれを出せ」
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
贅沢ぜいたくな品の贈答はならぬとか、祝儀や不祝儀の宴会はいけないとか、富籤とみくじは禁ずるなどという、緊縮の布令ふれが出るばかりで、むしろ不況の度はひどくなっていった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
祭の時には七日も芝居を興行して、田舎役者が芸をするその時には、藩から布令ふれが出る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
村々へ布令ふれを廻した位では、美女佳人は隠してしまって、決して御前には差出さしだしません。
先に、告示された布令ふれは、さらに広く諸国へまでわたった。そして恩賞にも、金銀ならば幾額いくら、荘園なれば田何枚と、書き加えられた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど当年二十三のものは子歳で、私は正にそれに当っている。何時いつ何日いくかに扱所に出頭して寸法や何やかやを調べるという布令ふれである。これは大騒ぎ。
……ここはもと佐和山城のあるじ石田三成の領分であった、二年前慶長五年七月、領主一代の合戦があるため、心ある者は陣へまいって働くようにという布令ふれがまわった。
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おのれ、そこの御高札を見ぬか、いや、辻々の掲示はもちろん、あれほど、厳しゅうかみより布令ふれてある念仏停止ちょうじのことを知らぬのか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城代家老の布令ふれがしばしば出て、政治に関する批判や論議を禁じ、三人以上の集会を禁じ、日没後は公用以外の外出を禁じ、やがて指名者のほかは登城まで差止めの布令が出た。
十八条乙 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
梅雪入道は、家康にかたくちかって、そこそこにさかいへ立ちもどった。にわかに家来一同をまとめて、領土へ帰国のむね布令ふれだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飲食店の時間にきびしい制限が布令ふれだされ、もちろん裏はあるにはちがいないが、この魚河岸はまるで別格のようで、表もあけたまま、軒提灯のきぢょうちんも掛けたまま、客は遠慮のない高ごえで
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
千早城もまた大捷たいしょうと聞えたので、同じ五月二十三日、還幸かんこうの沙汰を布令ふれだされ、晴れの都門凱旋がいせんの途についておられたのである。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百石につき米百二十俵を上下していたお禄が、少しまえから百俵ときまり、そのうえしばしば御借り上げの布令ふれが出るほどで、御政治むきの御不勝手なことは私などにもおぼろげには察しがついていた。
日本婦道記:桃の井戸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
江戸の常詰じょうづめをのぞくと、約二百何十名かの頭数が、今朝の総登城の布令ふれに驚いて、ひとみに不安な光をたたえ、本丸へ詰合っていたわけである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
田中兵部という大将がこの付近の監察に当たり「石田軍の兵となって出陣した者、また敗戦後に帰村した者は届け出るように、もし秘してかくまうような場合は屹度きっと申しつけるであろう」という厳重な布令ふれがまわった。
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
北京ホッケイノ囚人盧俊儀ロシュンギ、及ビ、ソノ護送役人ヲ殺害シテウバイ去ッタ大罪人ヲ訴エデヨ、という莫大な懸賞つきの布令ふれなのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御禁制の布令ふれが出ても出ても、岡場所にかく売女ばいたは減らないし、富興行はひそかに流行はやるし、万年青おもと狂いはふえるし、強請ゆすり詐欺かたりは横行するし
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たれが、そのような令をば布令ふれたか。——城戸に軍揃いくさぞろいせよ、などとは、わがつま貞氏どの以外には、一人いちにんとて、いわれまじき令であるはず」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日、曹操は、襄陽へ入城すると布令ふれて来た。蔡夫人は劉琮をつれて、こう渡口わたしまで出迎え拝礼して、城内へみちびいた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実は、明朝には、この由を、全家中へ布令ふれ出そうと存じていたが、はや、その方たちの耳にきこえ、いかい心配をかけたそうな。……ゆるせよ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり凡下放埒ぼんげほうらつでも、坊主でも武士でも、敵味方なく、正成の首さえ持ってくれば、その日から船井ノ庄一郡の地頭じとうにしてやるというお布令ふれだ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六波羅一そうの後、おのれ六波羅奉行ととなえ、御教書みぎょうしょなどを布令ふれだし、かずかずの越権、目にあまるものがある。——その足利こそ油断ならぬ者だ。
「さいぜん堀口貞満から、第一の布令ふれは、各陣へ廻しておいた。すでにあれによって、うごく者はうごいていようが」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いま、忠顕が来ての話では、どうしても、ここは明朝出発するとの布令ふれじゃそうな。女たちも身仕舞しておけよ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陳達ちんたつもぼやいていたが、どう考えても、こいつあ、やっぱり華陰県の県城で、布令ふれを廻しゃあがったせいだろうぜ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご裁可さえ給われば、ただちに、諸大名へ、兵の割当てと、発向の日を、布令ふれるばかりに相なっておりまする」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)