向合むきあ)” の例文
子爵と探偵は、頸飾のおいてある卓子テーブルを間に向合むきあって坐った。龍介は窓際の長椅子に腰かけて、窓硝子ガラスに身を、もたせかけていた。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その隅には、二人の中年の紳士が向合むきあっていて、その一人の大きな青眼鏡をかけた口髭くちひげのある男の顔が、こちらからは真正面に見えるのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おそろしく鐵拐てつか怒鳴どなつて、フトわたし向合むきあつて、……かほて……雙方さうはう莞爾につこりした。同好どうかうよ、と前方さきおもへば、知己ちきなるかな、とひたかつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其のひとつの、和蘭館オランダかんの貴公子と、其の父親の二人が客で。卓子テエブルの青い鉢、青い皿を囲んで向合むきあつた、唐人とうじんの夫婦が二人。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
向合むきあって相手の右の額を殴るには、左利きの人でなければできません。そうでしょう樫田さん。ところが棍棒についていた指紋は秋山さんの右手の指紋だし、秋山さんは右利きだ。
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ひとつの、和蘭館オランダくわん貴公子きこうしと、父親ちゝおや二人ふたりきやくで。卓子テエブルあをはちあをさらかこんで向合むきあつた、唐人たうじん夫婦ふうふ二人ふたり
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほっと吹く酒の香を、横ざまらしたのは、目前めさき歴々ありありとするお京の向合むきあった面影に、心遣いをしたのである。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……それは綺麗きれいとりなんですよ、背中せなかあをいつたつて、たゞあをいんぢやあないんです、なんともへません。むねところからぼつとあかくつてね、ながくちばしをしてるんです、向合むきあつて。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんでございます、まあ、」と立停たちどまつてたのが、ふたツばかり薄彩色うすさいしき裾捌すそさばきで、にしたかごはなかげが、そでからしろはださつ透通すきとほるかとえて、小戻こもどりして、トなゝめに向合むきあふ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われち、とりぶやうに、ばら/\ると、さすがは救世主キリストのお乳母うばさん、のさつと太陽した一人ひとりうづたかくろふく突立つゝたつて、狂人きちがひ向合むきあつてかゞみましたつけが、かなはなくつたとえて
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)