光明こうみょう)” の例文
氏の表面は一層沈潜ちんせんしましたが、底に光明こうみょうを宿してためか、氏の顔には年と共に温和な、平静な相がひろがる様に見うけられます。
が、それを見ようとして、図らずもその調査項目の前に記されてあった文字が、彼をして一道いちどう光明こうみょうを認めさせたのであった。それは——
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしてゲーテ崇拝すうはいの念の増すのは、さきの某文士のげんによれば、あるいはみずか俗化ぞっかして理想の光明こうみょう追々おいおいうすらぐのそしりを受けるかも知れぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それからどれくらいったときでございましょうか、あるにわかにわたくしまえに、一どう光明こうみょうがさながら洪水こうずいのように、どっとせてまいりました。
娘はしずかに、其の壁に向つて立つと、指をしなやかにかんざしを取つた。照らす光明こうみょうまさる、簪は小さなおのであつた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうしてそれを打ち消せばすぐ激するのです。それから自分の未来によこたわる光明こうみょうが、次第に彼の眼を遠退とおのいて行くようにも思って、いらいらするのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もうしますと、日羅にちらからだから光明こうみょうがかっとしました。そして太子たいしひたいからはしろひかりがきらりとしました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
この本尊である薬師如来やくしにょらいは、そもそも光明こうみょう皇后眼病平癒へいゆ祈願のためにと、ここの尼僧は説明してくれたと記憶するが、それで特に眼が大きく鋭く作られてあるのかと思う。
仏教弘通のはじめ、光明こうみょう皇后が自ら非人の傷を吸われたという伝説の生れた、その愛である。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
なぜかというに僕は昨冬、火難かなんって以来、全く前途の光明こうみょうを失っていたからである。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その後天平てんぴょう御代みよとなって、聖武しょうむ天皇が眼病をわずらたもうた折、光明こうみょう皇后がこの寺に御平癒へいゆを祈念されたところ、幸にして恢復かいふくされ、叡感えいかんのあまりその香薬師如来にょらいを胎内仏として
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
常の世にあっては、光明こうみょうを求めて進むのを習いとするが、非常の時、火事の時は、必ずや暗い方へ逃げなければなりません。お銀様もそれを知り過ぎたために、逃げ過ぎました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とにかく、この事については、兄自身がすべての責任を負うのが当然だと思います。道江さんもそのつもりで勇敢ゆうかんに兄にぶっつかってみてください。切に前途ぜんと光明こうみょういのります。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
……といって閨房けいぼうあかりらしい艶媚なまめかしさも、ほのめいていない……夢のように淡い、処女のように人なつかしげな、桃色のマン丸い光明こうみょうが、巨大おおきな山脈の一端はならしい黒い山影の中腹に
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その輝かしい光明こうみょう紺碧こんぺきの色を、あけひろげたたましいの底まで深く吸い込んだりした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
武田たけだとうのまえには、洋々ようようとしたひろい光明こうみょうが待っているかと感ぜられる。見よ! もう大根沢おおねざわ渓谷けいこくのあいだから、莞爾かんじとした富士ふじのかおが、伊那丸の無事ぶじをむかえているではないか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「播磨守殿ともあるべきお人が、それほどのことを御存じないか。そのむかしの光明こうみょう皇后、衣通そとおり姫、これらの尊き人びとを、お身は人間にあらずと見らるるか。但しは魔性の者と申さるるか」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが晩成先生は、多年の勤苦がむくいられて前途の平坦光明こうみょう望見ぼうけんせらるるようになった気のゆるみのためか、あるいは少し度の過ぎた勉学のためか何か知らぬが気の毒にも不明の病気に襲われた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
光明こうみょう仮現けげんとの中に存在したものは、ことごと
自分よりえらいもの自分より高いものを望む如く、現在よりも将来に光明こうみょうを発見せんとするものである。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは天平てんぴょう十一年冬十月に光明こうみょう皇后の営まれた維摩講ゆいまこうにおいてうたわれたもので、終日大唐楽だいとうがく高麗楽こまがくのような舶来の大管絃楽の演奏される間にまじって、うたわれたのであった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
声の限りに呼ぶと、二人の姿は見えずして、光明こうみょうの雲が、あたりいっぱいにかがやく。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あけの明星の光明こうみょうが、嶮山けんざんずい浸透しみとおつて、横に一幅ひとはば水が光り、縦に一筋ひとすじむらさきりつつ真紅まっかに燃ゆる、もみぢに添ひたる、三抱余みかかえあまり見上げるやうな杉の大木たいぼくの、こずえ近い葉の中から
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
凝視していた砂利バラスの上に、何の苦もなく突き倒されたように思ったが、その瞬間に彼は真黒な車輪の音も無い廻転と、その間に重なり合ってひらめき飛ぶ赤い光明こうみょうのダンダラじまを認めた。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
佐保山さおやましずま聖武しょうむ天皇ならびに光明こうみょう皇后の御陵に参拝したのは昨年の秋であった。いまの奈良市の、郊外とってもいい、静かな田野のひらけはじめたところに、この有名な丘陵が横たわっている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
藤皇后とうこうごう光明こうみょう皇后)が聖武天皇に奉られた御歌である。皇后は藤原不比等ふひとの女、神亀元年二月聖武天皇夫人。ついで、天平元年八月皇后とならせたまい、天平宝字四年六月崩御せられた。御年六十。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
光厳こうごん光明こうみょう崇光すこうの三上皇も、御幸みゆきしていらせられたので、一山には、守護の武士たちや、公卿くげたちも、おびただしい数にのぼり、賊軍の襲来に備える兵馬兵糧のしろはもとよりのこと、永い年月のうちには
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前途に光明こうみょうは燃えているのだ。元気をだせ諸君
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は学問なり事業なりについて、これから自分の進んで行くべき前途の光明こうみょうを再び取り返した心持になったのだろうか。単にそれだけならば、Kと私との利害に何の衝突の起る訳はないのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またあなたが、たちま光明こうみょう赫燿かくようとして雲にお乗りになるのをたかも知れません。また、もし氏神の、奥境内の、稲荷堂うらの塀の崩れからお出でになったというのが事実だとすると……忽ちこの天井。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
光明こうみょう
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)