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仇気
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あどけ
ふりがな文庫
“
仇気
(
あどけ
)” の例文
旧字:
仇氣
そして、
仇気
(
あどけ
)
なく眠っている女をのぞき込み、その顔だちをうかがいながら、好意のない眼でながめていると、彼女は彼の視線を感じた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「ええ。」と
仇気
(
あどけ
)
なく
秘
(
かく
)
さず、打明けて
縋
(
すが
)
り着くような返事をする。梓はこの声を聞くと
一入
(
ひとしお
)
思入って、あわれにいとおしくなるのが例で。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無精で
呑気
(
のんき
)
で
仇気
(
あどけ
)
ない愛嬌があって、
嫋
(
たお
)
やかな背中つきで、恋心に恍惚しながら、クリストフと自分との部屋の境の扉を一旦締めたらもう再び開ける勇気のなかったザビーネ。
アンネット
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
傍
(
はた
)
の目で痛ましく思うほどではなく、それをいやがらない子もあり、まだ
仇気
(
あどけ
)
ないお
酌
(
しゃく
)
の時分から、抱え主や出先の
姐
(
ねえ
)
さんたちに世話も焼かさず、自身で
手際
(
てぎわ
)
よく問題を処理したお
早熟
(
ませ
)
もあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お鶴は
涼
(
すずし
)
い目を下ぶせに、
真中
(
まんなか
)
にすらりと立って、
牛頭馬頭
(
ごずめず
)
のような
御前立
(
おんまえだち
)
を、心置なく
瞰下
(
みおろ
)
しながら、
仇気
(
あどけ
)
なく打傾いて
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
顔の下部は
円形
(
まるがた
)
で、フィリッポ・リッピの描いた処女のような、
仇気
(
あどけ
)
ない
真面目
(
まじめ
)
さをそなえていた。顔色は少し曇っていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ただし遣方が
仇気
(
あどけ
)
ないから、まだ覗いている
件
(
くだん
)
の長屋窓の
女房
(
かみさん
)
の目では、おやおや
細螺
(
きしゃご
)
か、
鞠
(
まり
)
か、もしそれ
堅豆
(
かたまめ
)
だ、と思った、が、そうでない。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
年老いたルイザは、雪が
融
(
と
)
けて湿ってる
息子
(
むすこ
)
の腕の中で、身をもがいた。そして子供のような
仇気
(
あどけ
)
ない笑いをしながら、「大
馬鹿
(
ばか
)
さん!」と彼を呼んだ。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と原抜きにして、高慢に
仇気
(
あどけ
)
なく高声で呼ぶ、小児の声が、もうその辺から聞えそうだ、と思ったが、出て来ない。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小
薔薇
(
ばら
)
や小川や
雉鳩
(
きじばと
)
や
燕
(
つばめ
)
などとの、
仇気
(
あどけ
)
ない馬鹿げた対話、または、次のようなおかしな問い——野薔薇に刺がなかりせば、——老いたる良人と燕は巣を作りしならば、あるいは
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
黄金のようなその
光線
(
ひかり
)
を浴びると、見る見る三輪ともぱっと咲いた、なぜでしょう、といって、
仇気
(
あどけ
)
なく聞かれた。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鼻は太く、歯並みや
賤
(
いや
)
しく、
清楚
(
せいそ
)
なところが少なく、ただ眼だけは生き生きとしてかなり
敏捷
(
びんしょう
)
で、また
仇気
(
あどけ
)
ない微笑をもっていた。彼女は
鵲
(
かささぎ
)
のようによくしゃべった。彼も快活に答えをした。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「
私
(
わたい
)
が
達引
(
たてひ
)
くから
可
(
い
)
いわ、」といって蝶吉は
仇気
(
あどけ
)
ない顔に極めて老実な色を装った。梓はこれを聞いて、何か気がさしたような様子であったが、
笑
(
わらい
)
に紛らして
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鼻の
隆
(
たか
)
い、目の鋭い、眉の迫った、額の狭い、色の浅黒い、さながら悪党の面だけれども、
口許
(
くちもと
)
ばかりはその
仇気
(
あどけ
)
なさ、乳首を含ましたら今でもすやすやと
寐
(
ね
)
そうに見えて
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と火鉢の縁に
肱
(
ひじ
)
をついて、男の顔を
視
(
なが
)
めながら、魂の抜け出したような
仇気
(
あどけ
)
ないことを云う。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「きっとあの私が
生命
(
いのち
)
に掛けましても、お目の治るようにして上げますよ。」と
仇気
(
あどけ
)
なく、しかも
頼母
(
たのも
)
しくいったが、神の宣託でもあるように、若山の耳には響いたのである。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と投げたように言いながら、
衝
(
つ
)
と、両手を中へ、袂を探って、肩をふらりと、なよなよとその唐織の袖を垂れたが、
品
(
ひん
)
を崩して、お手玉持つよ、と若々しい、
仇気
(
あどけ
)
ない風があった。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは、それは愛々しい、
仇気
(
あどけ
)
ない
微笑
(
ほほえみ
)
であったけれども、この時の教頭には、素直に言う事を
肯
(
き
)
いて、
御前
(
おんまえ
)
へ
侍
(
さぶら
)
わぬだけに、人の悪い、
与
(
くみ
)
し易からざるものがあるように思われた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
緋鹿子
(
ひがのこ
)
の
背負上
(
しょいあげ
)
した、それしゃと見えるが
仇気
(
あどけ
)
ない娘
風俗
(
ふう
)
、つい近所か、日傘も
翳
(
さ
)
さず、可愛い素足に台所
穿
(
ばき
)
を引掛けたのが、紅と浅黄で羽を彩る
飴
(
あめ
)
の鳥と、
打切
(
ぶっきり
)
飴の紙袋を両の手に
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
勇美子は返すべき言葉もなく、少年の顔を見るでもなく、モウセンゴケに並べてある贈物を見るでもなく、目の
遣
(
や
)
り処に困った風情。年上の澄ました
中
(
うち
)
にも、
仇気
(
あどけ
)
なさが見えて愛々しい。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手も足も
庇
(
かば
)
わずに、島の入日に焼かれながら、日金颪を浴びながら、緑の黒髪、煙れる生際、色白く肥えふとりて、小造りなるが愛らしく、その罪のなさ
仇気
(
あどけ
)
なさも、
蝴蝶
(
ちょう
)
の遊ぶに異ならねど
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お三輪といって今年が
七
(
しち
)
、年よりはまだ
仇気
(
あどけ
)
ない、このお才の娘分。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……自分介抱するよって、
一条
(
ひとくさり
)
なと、可愛い可愛い
女房
(
おかみ
)
はんに、
沢山
(
たんと
)
芝居を見せたい心や。またな、その心を
汲取
(
くみと
)
って、
鶉
(
うずら
)
へ
嬉々
(
いそいそ
)
お帰りやした、貴女の優しい、
仇気
(
あどけ
)
ない、可愛らしさも身に染みて。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と左右を見つつ、金魚鉢を覗くごとく、
仇気
(
あどけ
)
なく自分も
視
(
みつ
)
めて
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
愛吉は
仇気
(
あどけ
)
なく平手で唇を横に
扱
(
こ
)
いたが、すがめて
掌
(
たなそこ
)
を打眺め
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
指で口許を挟む真似、そしてその目の
仇気
(
あどけ
)
なさ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と嬉しそうに、なぜか
仇気
(
あどけ
)
ない笑顔になった。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
仇気
(
あどけ
)
なく
莞爾
(
にっこり
)
すら、チェーしたもんだ。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
仇
漢検準1級
部首:⼈
4画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“仇”で始まる語句
仇
仇敵
仇討
仇名
仇打
仇花
仇讐
仇英
仇人
仇家