下品げひん)” の例文
なに下品げひんそだつたからとて良人おつとてぬことはあるまい、ことにおまへのやうな別品べつぴんさむではあり、一そくとびにたま輿こしにもれさうなもの
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その後私は佛蘭西の農民も見たが、彼等の最も優れたものでさへも、モオトンの娘達に較べると、無智で下品げひん野呂間のろまだと思はれた。
下品げひんの縮の事は姑舎しばらくおいろんぜず。中品ちゆうひん以上に用ふるをうむにはうむところをさだめおき、たいを正しくなし呼吸こきふにつれてはたらかせて為作わざをなす。
やゝおもしろさにつりまれて、下品げひんうたもないでもありません。けれども、うたよみとしてはすぐれたひとといふことが出來できます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そうじて江戸えど人間にんげん調子てうしかるうて、言葉ことばしたにござります。下品げひん言葉ことばうへへ、無暗むやみに「お」のけまして、上品じやうひんせようとたくらんでります。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ゆえに目めているとき、つねに高きよいことを思うものは、夢にもまた下品げひんな、みだれたことを見ぬものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたくしはこの小娘こむすめ下品げひんかほだちをこのまなかつた。それから彼女かのぢよ服裝ふくさう不潔ふけつなのもやはり不快ふくわいだつた。最後さいごにその二とうと三とうとの區別くべつさへもわきまへない愚鈍ぐどんこころ腹立はらだたしかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし『竹取物語』のあの個条かじょうが、やや下品げひん諧謔かいぎゃくを目的とし、子安という言葉には別にちがった内容がありそうにも無いのだから、やはり今日と同じような連想と俗信とが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だい二に、きみのまえではいいにくいことだが、役人やくにんぜんたいが下品げひんなことだ。
下品げひんでも不潔ふけつでもないんですけれど、やはり女遊びにちがいありません。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うだ、うちたての蕎麥そばは、蕎麥そば下品げひんではだんじてない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またしてもくちずさむ、下品げひんなる港街みなとまち小唄こうた
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おそらくくちから出任でまかせに、たいして苦勞くろうなしにつくつたとおもはれますが、それがみな下品げひんでなく、あっさりとほがらかにあかるい氣持きもちでげられてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
直ぐに彼女からは下品げひんな陳腐なもの、意地惡い、痴鈍ちどんなものとなつて返つて來るのだと分つたときにも、また——私は、決して落着いた堅實な家は持てない。
うで下品げひんそだちましたなれば此樣こんことしておはるのでござんしよと投出なげだしたやうなことば無量むりようかんがあふれてあだなる姿すがた浮氣うはきらしきにず一ふしさむろう樣子やうすのみゆるに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すなわちこの鉤をまわしてうらないをした目的は、最初は決して下品げひんなものではなかったのを、のちに酒飲みは盃をさす人をきめるために、子どもはただおならのぬしを見つける戯れだけに用いて
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「どつちかと云ふと餘り見ない顏だねえ。下品げひんとか墮落だとかいふやうなところはちつともない。」
そしてやはり、下品げひんすぎるといふほどでなく出來できてゐるのは、人格じんかくによるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)